高級品やブランド品に憧れるのはなぜか。ジャーナリストの池上彰さんは「高級品やブランド品を求める人間の行動のベースには『他人への意識』が関係している。高級品を他人に見せびらかす自己顕示欲がブランド品の需要を支えている」という――。

※本稿は、池上彰『なぜ人はそれを買うのか? 新 行動経済学入門』(Gakken)の一部を再編集したものです。

高額でも買いたいもの

プレミアムとも違うラグジュアリーとは?

ダイコンやキャベツは安いほうがよく売れますが、宝石は必ずしもそうではありません。貴金属や高級外車など、自分のステータスを高め、所有欲を満たしてくれるものは、むしろ高価であるほうが喜ばれます。

高額かつ希少性があることを消費者の喜びにつなげて商品やサービスを展開することを「ラグジュアリー戦略」といいます。これは高額なものは価値が高いと思う消費者心理に基づいて価格を設定する「威光価格」の一種です。ここで押さえておきたいのはラグジュアリーとプレミアムの違いです。

一見似た両者ですが、プレミアムの価値は、品質の高さや優れた機能性など、ほかと比較して説明することができます。

これに対してラグジュアリーは唯一無二の存在で、その価値はほかと比較して語られるものではありません。いわば代替不可能であることが最大の価値であり、そうしたものを所有することに喜びを見いだせる――それがラグジュアリーです。

<ハイブランドは「ラグジュアリー戦略」を上手に使いこなす>
「ラグジュアリー戦略」においては、唯一無二の存在で、代替不可能であることが最大の価値になる

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「ラグジュアリー」と「プレミアム」の違いにも注目しておきたい!

同じブランドで揃えたくなる

IKEAや無印良品が人気の理由のひとつ

子どもはお気に入りのキャラクターがあると、あれこれバリエーション違いのものを欲しがります。メーカーもそれがわかっているので、同じキャラクターのシリーズをいろいろと揃えています。

じつは、この同じものを揃えたがる性向は子どもに限りません。何か新しいものを手に入れると、それに合わせて統一しようとする心理が私たちには備わっています。これは自分の行動や態度などをつねに一貫したものとして示したいとする「一貫性の原理」が働くためです。こうした原理によって同じブランドのものを揃えたくなることを「ディドロ効果」といいます。「ディドロ」とは、この効果にはまったフランスの哲学者の名前です。

このディドロ効果を積極的に活用した展開をおこなっているのが、ファッションブランドやインテリアショップなどです。たとえばIKEAや無印良品の店舗に行くと、そこには統一した世界観ができあがっているのがわかります。その世界観のなかに引き込まれている消費者は少なくありません。

消費者をいかに自分たちの構築した世界に取り込むか。それを導いてくれるのが、大人にも子どもにも備わっているディドロ効果だということです。

<大人も子どもも、男性も女性も問わず、ひきつける魔力がある「ディドロ効果」とは?>
人気のファッションブランドやインテリアショップほど「ディドロ効果」をうまく活用している

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消費者を自分たちの構築した世界にいかに引き込むかが、ポイント