日本人捕虜には脅迫めいたことはしなかった

ジュネーヴの捕虜条約によると、捕虜は姓名と軍籍番号、階級のほかは何も喋る必要はないことになっている。しかし、条約が出来てからでも、西洋では情報を取るために現実に脅迫に似たことがあったという噂を聞いている。

だが、日本の捕虜に関しては、少なくとも私のいた収容所では絶対にそういうことはなかったと断言していい。情報官の人柄によっては、威厳を示し、少しは抑えなければ駄目だという傾向の人もいた。ドイツ人やイタリア人の場合はそれでよかった。しかし、日本人にそれを当てはめることには私はあくまで反対し、そうしないように同僚にも頼んだ。

私の考えでは、日本人は抑えられることには馴れている。だから抑えられながら、表面抑えられたと見せて逃げ廻る術を心得ている。抑えないで人間扱いすると勝手が違うので、ある意味では陸に上がった河童のように抵抗力を失う。