「一番驚いたのは、一般社員と非正規社員の感覚や心理状況がほとんど変わらないことでした。職場実感では、管理職と一般社員を含めた正社員と非正規社員の間で格差が出ると予測していたのですが、管理職と一般社員の間にここまで差が出るとは考えていませんでした」
ここでいう一般社員とは、管理職(コア社員)以外の正社員(非コア社員)のことである。今回の調査では1075人(公務員・その他と回答した人を除く)に該当する。グラフからも明らかなように、彼らの職場実感は、非正規社員のそれとさほど大きな違いは見られない。
「自分を必要な人材」と思っている一般社員は約44%(管理職で約72%、非正規で約37%)、「自分の果たしている役割は大きい」と感じている一般社員は約50%(管理職で約73%、非正規で約39%)、「自分の会社に将来性がある」かどうかにいたっては、あると感じている一般社員は約22%(管理職で約42%、非正規で約26%)と非正規をさえ下回っている。
「疎外感が強く、一般社員と会社との距離感は、非正規社員の人の感じるそれと大きく変わらなくなっているのでしょう」
管理職(コア社員)と一般社員(非コア社員)の意識の分断はどのようにして起きたのか。守島氏は、1990年代から転換点を迎えた企業の人事戦略の影響が顕著に表れた結果と見る。
「バブル崩壊後、経営の効率化を余儀なくされたため、成果主義の導入や雇用の非正規化が進められました。さらに企業は人材の選別を厳しくし、ハイパフォーマーとその他という線引きを明確化させました。成果を挙げた人など一部の社員を厚遇し、その他一般社員は別の扱いをするようになった。ハイパフォーマーはさらに創造性の高い仕事を与えられ、スキルを磨き、やりがいや充実感を得る。一方、その他大勢の非コア社員は、成果ややりがいが実感しづらいルーティンワークを押しつけられ、格差はさらに広がっていったのです」