山辺氏も上田氏も留学経験があり中国語を流暢に操る。中国や中国人に対しては普通の日本人よりもずっと“免疫力”がある彼らでさえ、中国系企業に慣れるまでには欝になりそうな時期があったという。

とはいえ、レナウンの例に見られるように、中国系に日系企業が買収される事態が相次いでいる。「ある日突然、自分の会社が中国系になっちゃった」などという状況になりかねないのは誰も同じで、もはや他人事だと笑ってはいられない。

ただし、中国系にもよいところはあると上田氏はつけ加える。

「たとえば意思決定の速さ。日本企業のように稟議とか根回しとかないので何でも速い。その代わり覆るのも速いんですが(笑)。走りながら物事を決めていくので、何か頼まれたらすぐにやらなければダメ。そこに自分の意見もプラスしてオリジナリティを出すと喜びます。日本とは逆ですかね。報告するときもスピードが大事。上司を見つけたらすぐに駆け寄って歩きながらでも話します。タイミングを見計らっていると、遅いじゃないかと怒られるので」

上田氏は彼らについて「褒められると喜ぶタイプが多い」と指摘する。誰でも褒められればうれしいものだが、特にエリート街道を歩んで日本支社勤務となった中国人はプライドが高く、大げさに褒めると自尊心をくすぐられて機嫌がよくなるという。

山辺氏もクオリティを重視する取引先の日本企業と中国人上司との間で板ばさみとなった。が、逆に日本企業の経営陣とよい関係を築くことで自分の立ち位置を確保する術を身につけた。

「何でもバカ正直に中国側に報告せず、つかんだ顧客情報は自分のところでいったんシャットダウン。ここぞというときに、自分に都合のいい情報を中国側に小出しにすることで自分の存在価値をアップさせます。中国人上司は権威に弱いですから、無理難題を要求されたときなど、『日本の一流企業のトップがこう言っているのですから』と反撃すると黙る。日本人としての強みを逆手にとった、ある種のしたたかさが大事です」