チームづくりで大事にするのは、「公平性」と「明確さ」「透明性」である。年功序列制を排除し、多様な人材にチャンスを平等に与え、チーム力を最大限に発揮していく。とくに公平性。これは久光製薬の監督時代から。なぜかというと、女子バレーボールの世界は監督への妬みやひがみが生まれやすいからだった。
例えば、チームにA、B、Cの3人の選手がいたとする。監督がCばかりに声をかけると、監督はAやBから話を聞いてもらえなくなる。どこぞの会社の職場と同じことだろう。
「ある程度、同じように選手とは接します。気配り、目配りは大事なんです。もちろん期待する選手への指導が長くなるのは仕方ありません」
公平な選手選考を実践するため、眞鍋監督は選考基準の数値を明示するようにした。どのスポーツも選手のパフォーマンスの数字が勝敗に反映されるものだが、女子バレーの選手はデータをいやがる傾向にある。
でも眞鍋監督はあえて体重やジャンプ力などの基礎体力のデータはもちろん、毎日のように練習試合のパフォーマンス数値をこまかく洗い出し、選手にフィードバックするよう工夫を施している。
練習をのぞけば、コートサイドのホワイトボードの横にはB4判くらいの紙が張り出され、全選手のパフォーマンス数値が表に明示されているのだ。車か保険の営業実績表みたいに。
表からは、スパイクの決定率、効果率やサーブ、ブロック、サーブレシーブなどの様々な数値がわかるようになっている。一番下には五輪でメダルをとるための目標設定値がならぶ。これは北京五輪の全試合のデータからはじき出したものである。
しかも信号形式で数値が色分けされている。目標値をクリアしていれば緑色、危なければ黄色、そしてダメなら赤色。数値のよしあしで色の濃淡も変わる。つまり、「まったくダメ」なら真っ赤っ赤である。
眞鍋監督が一番こだわる数字が、勝敗により反映される「スパイク効果率」だという。単なるスパイクが決まった成功率ではなく、それに被ブロックやミステイクの本数を絡めていくものだ。例えば、10本のスパイクのうち五本決まれば、スパイク決定率は50%。でも5本決まっても、3本ミスすれば、スパイク効果率は20%となる。つまりは精度が求められる。