一方、発覚すれば重い懲戒処分になる可能性が高いのが業務に関する犯罪、特に使い込み(横領や私的流用)のような金銭に関わるものだ。大内教授がいう。
「会社と社員の基本的な信頼関係を破壊する行為であり、背信性が高いとして1度で懲戒解雇となるケースがあります」
金額の多寡によって処分の重さも違ってくるが、出張費のごまかし程度でも、一定額に達していれば懲戒解雇の事由になる。ただ、どの程度の額が「懲戒解雇ライン」かという一般的な基準はなく、結局は会社の判断しだい。「競業」も発覚すれば大問題に発展する。
就業規則で無許可の副業を禁じている企業は多いが、単に「許可なくアルバイトをしていた」というだけで懲戒解雇とするのは「権利の濫用にあたる可能性が高いでしょう」(大内教授)。だが、同業他社に雇われるとか、同業の会社を立ち上げた場合(競業)は、事業のノウハウや顧客情報の流出が懸念されるため、懲戒解雇となりうるのだ。
1963年生まれ。東京大学法学部を卒業後、同大学院修了。『労働条件変更法理の再構成』『どこまでやったらクビになるか』など著書多数。近著『君は雇用社会を生き延びられるか』。