「本当の意味で発送電分離が実現して、送電線が自由に使えるようになったとき、注目すべきは分散型エネルギー(発電所で作る電力などの大規模集中型のエネルギーに対して、消費地の近くで作るエネルギーのこと)です。

分散型といいながら、バックアップの必要性から電力会社の電力系統ともつながっていて、発送電分離が進めば進むほど、分散型のビジネスチャンスも広がります。

太陽光発電、風力発電、蓄電池、FEMS(工場エネルギー管理システム)、電気自動車など、今出てきているエネルギーの新技術はほとんどが分散型ですが、分散型エネルギーで本格的なビジネスを興せた国はまだない。ここに新しいチャンスが出てくる」

今までの電力自由化の議論は、電力会社と電力を使う需要者の間の“縦”の関係で語られることが多かった。

だが、今後、再生可能エネルギーを含め、分散型エネルギーが広まっていくためには需要者同士が電力を融通し合うような“横”の自由化が重要な課題になってくると、井熊氏は指摘する。

「たとえばスマートハウス(太陽光発電や蓄電器などの分散型エネルギーシステムやITを駆使してエネルギーの最適制御を行う先進住宅)で電力が余ったら隣の家に融通するとか、あるいは地域でまとめたエネルギーを地域の学校やスーパーマーケットに融通するとか、いろいろなシェアの仕方が考えられる。分散型エネルギーのニーズは、国内外で出てくると思うし、すでに住宅メーカーや自動車メーカー、IT企業などが関連事業に乗り出しているように、さまざまな業種に参入のチャンスが出てくると思います」