水虫薬を担当したら足元が痒くなった
開発の途中で、江口さんは国際営業部へ異動。現在のブランド担当、柴田雄一郎さんが後を継いだ。盲点を突いた商品の発想もさることながら、様々な手法を駆使してPRに努めた柴田さんの努力もヒットにつながった要因だ。
「ターゲットは使用感にうるさい女性。肌触りが大事なのでべたつくクリーム剤は避け、サラサラした速乾性の高いジェル剤にしてよかったと思います」(柴田さん)
難問だったのはやはり傷あとの定義。傷あとの捉え方は人によって千差万別だ。ケガした後のどのタイミングで使えばいいのか。誰のどんな傷あとにも使えるのか、といった疑問が次々と出てくる。日頃多用するTVCMのほか、インターネットや雑誌媒体で効果的な使用法の紹介に力を入れた。
「どのタイミングで『アットノン』を使ったらいいかということは、さすがに15秒CMでは伝えられません。違う媒体で補足する必要がありました。ネット上のブランドサイトで見てもらう。雑誌にも出稿して商品情報を盛り込み、絵と文字でしっかり理解してもらうことに力を入れました」(同)
パッケージの制作も苦心した。商品名以上に「傷あと・やけどのあとに」と大書きし、実際の使用例を示すイラストまで載せているパッケージは、チューブタイプの医薬品ではあまり見かけない。
社長以下、上司を肩書ではなく、○○さんと呼ぶ習慣。社員の提案制度で「こんな医薬品があったらいいな」と、開発担当でなくても新商品を提案できる風通しのいい社風。それでも開発担当が感じるプレッシャーは並大抵ではないようだ。医薬品を担当すると、その症状が自分にも出るという。