「新病院」を中心に街を作り、医療都市のモデルケースへ

【武中】とりだい病院のある米子の街は15万人弱の人口です。ただ、面積が広く、店が散らばっている。まさに車がないと生活できない街です。だからこそ、2029年に着工する新病院が大切になってくる。病院を中心として、歩いて15分圏内で、おおよそのことが完結するような街ができたらいいなと考えています。

鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 増刊号』

【岡村】それは素晴らしい。

【武中】昼間、とりだい病院で働く人、患者さん、鳥取大学医学部を合わせて5000人ぐらいの方が集まっている。市内で最も人口が密集している場所。だから病院を核として街づくりをするというのは理にかなっている。

アメリカにはメイヨー・クリニックのあるミネソタ州ロチェスター市のように病院を中心とした街があります。地方が生き残るには、医療と教育が大切。この2つの核になる施設にしたいなと準備を進めています。

【岡村】とりだい病院内を歩いていると、あちこちに患者さんに対する心遣いを感じます。そうした対応について、自分たちがやってますと強調する感じもない。押しつけがましくないのです。自然にそうなっているのが素晴らしい。そうした医療施設を中心とした街を作ることができれば、モデルケースになるはずです。

【武中】我々のホスピタリティはこれまで病院に関わってきた人たちの蓄積、積み上げです。私の(病院長)在任期間にそれを途切れさせてはならない、いや、上積みしなければならない。その責任があると改めて自覚しました。

そして、過疎、超高齢化社会が進む山陰だからこそ、「医療のエコ」を考え、実践していく必要があると再確認しました。今日はありがとうございました。

※1 基礎研究、非臨床試験などの研究過程を経て、薬品の有効性や安全性を評価する臨床試験――治験に入る。治験は、通常3つのフェーズに分けられる。第I相臨床試験(フェーズI)は、少数の健康な人間を対象に、被験薬の安全性(有害事象、副作用)や薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)を検討。第Ⅱ相臨床試験(フェーズII)では、少数の患者を対象に、有効で安全な投薬量や投薬方法などを確認。第III相臨床試験(フェーズIII)では、多数の患者を対象に、既存薬や既存治療(ない場合はプラセボ、つまり偽薬)との比較で被験薬の有効性と安全性を最終的に確認する。
※2 タンパク質を標的とした、分子量が500以下の薬。一般に化学合成で製造される。
※3 薬物が体内に投与されてから排泄されるまでの過程。
※4 治療効果があらわれた割合、あらわれる割合を意味する。治療効果があった症例数を治療数で割って算出する。
※5 患者の体質や病気に関連している遺伝子を細かく調べ、体質や病気のタイプにあわせて治療を行うこと。オーダーメイド医療と呼ばれることもある。

岡村直樹(おかむら・なおき)
アステラス製薬株式会社代表取締役社長
CEO1962年静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、1986年旧山之内製薬株式会社入社。2010年米国OSI ファーマシューティカルズInc. CEO、2012年アステラスファーマ ヨーロッパLtd.経営戦略担当SVPを務める。アステラス製薬帰任後は事業開発部長、経営企画部長などを経て、2018年経営戦略担当役員就任。2023年4月より代表取締役社長CEOに就任。
武中 篤(たけなか・あつし)
鳥取大学医学部附属病院長
1961年兵庫県生まれ。1986年、山口大学医学部卒業。1991年神戸大学院研究科(外科系、泌尿器科学専攻)修了。神戸大学医学部附属病院、川崎医科大学医学部、米国コーネル大学医学部客員教授などを経て、2010年に鳥取大学医学部附属病院泌尿器科教授に就任。2017年副病院長。2023年4月鳥取大学副学長および医学部附属病院長に就任。
関連記事
冬は血管がドロドロになりやすい…「絶対に放置してはいけない脳卒中」リスクが急増する"危険な場所"
子育て世帯で大流行のマイコプラズマ肺炎…家族ドミノを起こしがちな「やっかいな理由」を感染症医が解説
がんでも脳卒中でも心筋梗塞でもない…75歳以上の8割が5年以内に死亡する「寝たきりを招く病気」の名前
「風邪をひいていないのに咳が続く」40歳以上は要注意…"うつ症状"を伴う患者もいる「呼吸器の病気」の名前
和田秀樹「実は一人暮らしの認知症患者ほど症状が進みにくい」…認知症の人にこれだけは絶対してはダメなこと