相手に「心のうち」を話してもらう効果
実はネガティブな気持ちとは、言葉に変換されて、それを他人が「それは困るね」などと受け止めてくれた時点で小さくなる性質を持っています。
ですから「気を遣う」「プレッシャーを感じる」「心配もある」などの気持ちを話題にすると、相手も喜んで話してくれるでしょう。
気持ちを話すと、気分がラクになる。このことを覚えておいてください。
「気を遣う」「やめたくなる」「いやになる」「投げ出したくなる」――。
こういったネガティブな気持ちは、ふだん言葉にして表現されることが少ないので、話題にされるととても会話がはずみます。心に溜まっていたものがどっと吐き出されるように、言葉になって出てくるのです。
「家も仕事も投げ出して好きなことができたら、って思うことありますよね」
そう言われると、多くの人が「そうそう」と乗ってくることでしょう。
もちろん、ネガティブな気持ちを話題にしてはいけないときもあります。
それは大きな悲しみ、大きなショックを受けた人に対するときです。
そのような気持ちは、本人もまだ受け止めることはできません。家族が亡くなった人に「これからの生活が大変だね」などの言葉は、誰だって絶対にかけないはずです。
この違いは、どなたにも理解していただけるでしょう。
感情は誰もが理解し、共感できるものです。
ですから、「うれしい」といったポジティブな気持ちだけでなく、「困った」「ショック」「つらい」などのネガティブな気持ちもまた、人類共通の話題といえます。この部分で話ができるようになれば、もう共通の話題を無理に見つける必要はありません。
一つの話題にさまざまな気持ちを見つけられるようになれば、もう会話で困ることはなくなるでしょう。
実は話題にしてほしいこんな「微妙な気持ち」
「私、結婚しました」
こう聞けば、誰もが「幸せ」という気持ちを思いつき、それを言葉にするでしょう。
しかし、そのような誰もがわかる、よくある気持ちの裏には、
「一緒に暮らすとお互い腹が立つこともある」
とか、
「独身時代に思い描いた結婚生活とちょっと違う」
といった、ただ幸せというだけでない微妙な気持ちもあるものです。
コミュニケーションが上手な人は、それをうまく想像して話題に取り入れ、会話をふくらませていきます。
「幸せな毎日でしょう」といった当たり前の話を十分にしたあとで、相手の微妙な気持ちにも触れていくのです。
「でも、実際一緒に暮らしてみると『ここだけは腹が立つ』ってこともありますよね」
そう話を向ければ、相手も待ってましたとばかりに面白い話をしてくれるでしょう。