会話を弾ませるには、どうすればいいか。話し方講師の野口敏さんは「たとえば『私、結婚しました』と聞けば、誰もが『幸せ』という気持ちを思いつくが、その裏には『一緒に暮らすとお互い腹が立つこともある』といった微妙な気持ちもあるものだ。コミュニケーション上手な人は、当たり前の話を十分にしたあとで、相手の微妙な気持ちにも触れ、会話をふくらませていく」という――。
※本稿は、野口敏『どんな人とも楽しく会話が続く話し方のルール』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
ネガティブな気持ちを上手に話題にできる人
たとえば、相手が「出向で子会社の役員になった」という話を聞いたら、「うれしい」「張り切る」「憧れ」というポジティブな気持ちを想像するだけでなく、「実は左遷でしょんぼり」など、ネガティブな気持ちを想像した人もいることでしょう。
「ネガティブな気持ちを話題にしたら、相手が気を悪くするのでは……」
そう気を遣って、話題にすることを控えてしまうケースもあるかもしれません。
話が苦手な人は、このように「ネガティブ=話題にしてはいけないこと」と誤解している場合が多いのです。
楽しい話ができるかどうかを分ける決め手は、このネガティブな気持ちを自由に操ることができるかどうかにかかっています。
では、「子会社への出向」に、今度はネガティブな気持ちを感じてみましょう。
子会社側の人から見れば親会社から出向してきた人に冷たい対応をする人もいるかもしれません。ただしそこで「冷たい人もいますよね」と言うのは、相手の気持ちに触れていません。
相手を主役にして想像すると、「周囲との対応には気を遣う」という気持ちが見つかるでしょう。
「出向先では気を遣うことも多いでしょうね」
そう聞けば、出向先の誰かが新しい登場人物として話題に出てくるかもしれません。すると、その後の話に大きな展開が期待できます。
冷たく当たる人の話が出たら「会社にはいろんな人がいますからね」と続ければ、今度はいろいろな人へと想像が飛び、話はどんどん広がります。
ほかにも「プレッシャーもある」とか「心配なこともある」など、慣れてくればさまざまな気持ちがあることに気づけるようになります。