スーパーに紛れる「中国産の“日本産”」

筆者の印象としては「外国由来の高級果物」というイメージは消費者の側に一般的に広まっていると思われる。基本的には地元の市場で売られているというよりは、スーパーで取り扱われている。

青果コーナーに陳列されており、「日本由来の高級ぶどう」というような表示がされてあることも少なくない。中間層が行くスーパーだけでなく、一度の買い物で2万~3万円の買い物をするような富裕層が行く高級スーパーでも売られているなど、価格や産地も千差万別だ。

現地の流通関係者は以下のように解説する。

「基本的に日系や現地ハイブランドのスーパーでの商品はすべて正規に日本から輸入されたものです。富裕層は価格というより味やブランドに価値を見出しますから、店側もその本物に対するニーズに対応する。

一方、中間層のニーズには『ちょっとリッチな感じを味わいたい』『珍しいものを食べてみたい』という経済成長に伴う消費性向の多様化が根幹にあるように思います。中間層は支出をできるだけ抑えたいという側面もあるため、圧倒的に安い中国産が『日本産』として陳列されていた場合であっても、それを喜んで購入するというわけです。

まあ、彼らだって偽物だと気づいているかもしれませんが、例えていえばヴィトンのバッグが3000円と言われて本物とは思わないけども、それはそれで受け入れればいいかという感じで楽しんでいると思いますよ」。

中国産が『日本産』として販売されている実態はどういうものか。ショッピングサイトやインスタグラムなどSNSを通じたオンライン販売を調査した。

“日本産”のはずの「鮮なぶどう」

まず「シャインマスカット」で検索すると膨大な出品者が発見されたが、そのうち少なくない数が「日本産のブドウ、シャインマスカット」と題して販売しているのだ。代表的なのが以下の出品業者(以下の画像1)。

筆者提供
【画像1】インドネシアのオンラインショッピングサイトの画像

商品紹介の中で「新鮮で甘い日本産の種無しブドウ」と大文字で強調されているが、この商品の写真を拡大したのがこちら(画像2)。

筆者提供
【画像2】ネットで販売されているシャインマスカットの画像

商品にばっちりと「中国産」と明記されており、すぐに虚偽だとわかる。価格も5万ルピア(約500円)と異常に安く、流石にそんな値段でシャインマスカットは食べられないだろうということはすぐにわかる価格設定だ。

さらに、少し笑ってしまったのだが、こちらも日本産として販売されていた中国産シャインマスカットだが、紙箱が「鮮なぶどう シャインマスカット」という「新鮮」の誤字が強く疑われるデザインになっていた(画像3)。(筆者がオンライン上で調べた限り、「鮮なぶどう」というブランドや標語は見当たらなかった)

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【画像3】ネットで販売されているシャインマスカットの画像
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【画像4】ネットで販売されているシャインマスカットの画像