「自由と責任」がもたらした大きな変化
この小さなシフトは大きな変化をもたらした。ネットフリックスの従業員の働き方は、根本的に変わった。所定の休暇や勤務時間、業績評価といった従来型の方針は取り払われ、従業員には自主性が与えられた。目標さえ達成すれば、好きなように働くことが許されるようになった。
当初、このアプローチには懐疑的な見方もあった。しかし会社が成長し、繁栄するにつれて、それが奏功しているのは明らかになった。
この企業文化は、優秀な人材を引きつけ、維持するのに役立っただけでなく、より良いアイデアを生み出すことにもつながった。
同社は市場調査やフォーカスグループといった従来の方法に頼らず、クリエイティブ・チームに新番組や新作映画の企画・制作の主導権を握らせた。その結果、世界中が注目するような斬新なテレビ番組や映画が生み出された。
マッコードは、自由と責任を重視するこのアプローチを、「パワー」というシンプルな言葉で要約した。
「パワー」が持つ本当の意味
これは、取り扱いが難しい言葉でもある。
「全体主義の独裁者」や「横暴な上司」「他人を支配するために密室で下される容赦のない決定」といった、ネガティブな意味合いを持つ場合があるためだ。「自分とは無縁の言葉だ」と思う人もいるかもしれない。
だが、「パワー」の意味はそれだけではない。マッコードはこの言葉を、「人に自信や権限を与える」という意味で用いていた。
つまり、自分の仕事は自分でコントロールでき、人生は自分の手の中にあり、自分の将来は自らの手で変えられるという感覚だ。コントロール感と呼び換えてもいい。この感覚は、他人を相手に行使するものではない。それは自分自身が感じるものであり、屋上に立って「私ならできる!」と叫びたくなるようなエネルギーのことだ。
本書で紹介する2番目のエネルギー源は、コントロール感(パワー)だ。それは、気分を良くし、生産性を高めるための重要な要素だ。何より、これは他人から奪うものではなく、自分自身でつくり出すものなのだ。