それから20年後、奇跡が起きた

時は流れ、その10年後。ブロックバスター・ビデオは破産を申請した。同社はオンラインビデオへの移行という時代の流れについていけず、店舗の大半を徐々に閉鎖し、最終的に破産した。

さらに時間を10年間早送りすると、ネットフリックスはオンライン・ストリーミングサービスを提供する企業に生まれ変わり、時価総額は3000億ドルに達し、世界でも屈指の革新的な企業として称賛されていた。

ブロックバスターのCEOに一笑に付されたネットフリックスは、世界トップクラスの大企業に変貌を遂げた。

この奇跡のような出来事は、いったいどのようにして起こったのか?

成功した「最大」かつ「シンプル」な理由

答えはいくつかある。

ヘイスティングスら同社の幹部の優れたビジョンを評価する人もいる。インターネットが普及していくのと同じタイミングでそれに合ったビジネスを展開したというタイミングの良さを指摘する声もある。だが、ネットフリックスが成功した最大の理由はもっと単純である。

それは、企業文化(カルチャー)だ。

ネットフリックスの事業が軌道に乗り始めた頃、リード・ヘイスティングスはパティ・マッコードを同社のチーフ・タレント・オフィサーに任命した。

それまで数社のIT企業で人事を担当してきたマッコードは、従来の人事管理手法には満足しておらず、従業員が自分の仕事を自分でコントロールできると感じられるような企業文化をつくりたいと考えていた。

ヘイスティングスはマッコードと協力して、自由や責任の重視など、同社の企業文化の指針となるような価値観をつくり上げた。