他党にはない「二枚看板体制」

自民党は総裁が首相に就任するため、ナンバー2の幹事長が選挙や国会、人事、政治資金などの党務全般を取り仕切る。総裁と幹事長はライバル関係にあることも少なくない。岸田文雄前首相と茂木敏充前幹事長はまさに犬猿の仲だった。その代わりに内閣の要である官房長官に首相最側近が就くことが多い。

玉木代表と榛葉幹事長の関係は「首相と官房長官」に近いといえる(石破茂首相は党内基盤が極めて弱く、党内に幅広い人脈を持つ森山裕幹事長の尻に敷かれている。岸田前首相にも依存しており、岸田政権で官房長官を務めた岸田派ナンバー2の林芳正氏を続投させた)。

立憲民主党の野田代表は党執行部の刷新感を演出するため、誠実さを売りにする小川氏を幹事長に抜擢する一方、財務省出身で最側近の大串博志氏を代表代行(党務総括)兼選挙対策委員長に充てた。小川幹事長の役割はテレビ出演や記者会見に限定し、選挙や人事などの実権は渡さず、野田代表と大串代表代行が握っている。玉木代表と榛葉幹事長の関係とは大違いだ。

日本維新の会は総選挙惨敗で馬場伸幸代表が退くことになった。馬場体制を支えてきた藤田文武幹事長は連帯責任をとるとして後継を選ぶ代表選に出馬しない。馬場氏と藤田氏は16歳も離れており、主従関係は明確だった。

むしろ玉木代表と榛葉幹事長の関係に近いのは、維新を旗揚げした当初の橋下徹代表と松井一郎幹事長の関係だろう。橋下氏は大阪府知事として高い人気を誇ったが、党内調整や政界工作は自民党出身で5歳上の松井氏が担い、強烈なタッグを組んだ。橋下・松井体制で維新は一気に飛躍したのである。両氏が去った後の維新は坂道を転がり落ちるかのようだ。

国民民主党の一枚看板である玉木氏を不倫スキャンダルが直撃したことで、榛葉氏の存在感がにわかに増した。榛葉氏が今後、玉木氏を飛び越して「政局のキーパーソン」に躍り出る可能性もある。国民民主党は期せずして「二枚看板体制」を手に入れた。年末の予算編成・税制改正で「178万円」を勝ち取れば「災い転じて福となす」となるかもしれない。

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