「趣味は玉木雄一郎」榛葉氏の危機管理対応が光る
政界に敵が多い玉木氏の唯一無二の側近が、2歳年上の榛葉賀津也幹事長だ。今回の不倫スキャンダルで一発退場を免れたのも、榛葉氏の危機管理対応が奏功した結果といえる。
榛葉氏は参院静岡選挙区で当選4回。県内の高校を卒業した後、米国やイスラエルへの留学を経て帰郷し、民主党公認で参院議員になった。野党再編のなかで国民民主党に残り、諸先輩に疎まれてきた玉木氏の最側近の座をいつの間にか射止めていた。「趣味は玉木雄一郎」と公言する一方、静岡の自宅ではヤギを飼っている。変わり種の政治家である。
国民民主党の大半が立憲民主党に合流した後、党内では前原誠司元外相や古川元久元経済財政相らベテラン勢が幅を利かせていた。そのなかで代表の玉木氏が最も信頼を寄せたのが榛葉氏だった。前原氏が玉木氏に代表選で敗れて離党した後、榛葉氏の党内基盤はますます強固になっていった。
榛葉氏は押しが強い。記者の質問に猛然と反論してやり込める毒舌の記者会見は永田町界隈では知られていたが、一般の知名度は決して高くはなかった。その榛葉氏が株を上げたのが、玉木氏の不倫スキャンダルへの対応だった。瀬戸際に追い詰められた玉木代表を守る兄貴分の幹事長として、俄然注目を集めたのだ。
「逆風下で代表を守る幹事長」として称賛される
不倫スキャンダルが報道された日、榛葉氏は玉木氏にただちに謝罪会見を開かせて、代表を続投するかどうかは「仲間の意見を聞いて決める」と言わせた。榛葉氏は記者団を集め、玉木氏から事前に不倫スキャンダルを聞かされて「何をやっているんだ。この大事なときに、しっかりしてほしい」と叱責したと明かす一方、「党のために、私自身が玉木氏を今は支える時だ」と続投の流れをつくった。
その夜、東京・有楽町の街頭に玉木氏とともに現れ、我が事のように神妙な表情で頭を下げる一方、玉木氏の肩を両手でパンパンと叩いて励ましながら釈明演説を促す動画がネットで拡散し、「逆風下で代表を守る幹事長」として称賛された。
玉木氏の続投が党内で了承されると、党の倫理委員会に不倫スキャンダルの調査を委任。調査中、代表権限は制限されるのかと記者会見で追及された時も「本人は相当反対しているから、少し自主的に静かになるのではないか。役職としては、なんら制限はない」と巧みにかわしたのである。
今回の総選挙躍進も玉木氏と榛葉氏が二人三脚で進めたユーチューブ戦略が最大の勝因であろう。国民民主党は大企業系労組の組織票に支えられてきたが、全国の比例票を前回の2.4倍の617万票まで飛躍させた最大の原動力は、玉木氏が自ら政治や政策を解説する『たまきチャンネル』(11月18日現在で登録者数約45万人)が若者・現役世代に支持を広げたことだ。