直感ほどやっかいなものはない

市場のパニックの最中に、あるいはパニックが起こると予想して売却するのは、自分には未来を予測する力があると考えることでもある。これほど投資家にとって最も高くつく“直感”はないかもしれない。こと投資においては、直感など舞い降りてこないに越したことはない。

ウォーレン・バフェットもこう言っている。

「市場で何が起ころうとしているかなど、私にはまったくわからない。今日、今週、今月、あるいは今年市場がどうなるかなど自分にわかるはずはないし、知る必要があると思ったこともない。だが10年後、20年後、あるいは30年後に株は今よりずっと高くなっているとは思う」

いずれにせよ、できるだけ安値で投資商品を買うために時間と労力を費やしても、期待するような目覚ましいリターンは得られない。

「底値で買い続ける」対「定額投資」の結果

ニコラ・ベルべ著、土方奈美訳『年1時間で億になる投資の正解』(新潮新書)

たとえば信じられないようなツキに恵まれ、相場が下落するたびに底値で投資できた人がいたとしよう。金融アナリストで作家のニック・マギウッリが計算したところ、1970年から2019年にかけて相場が下落するたびに底値で投資できるというとんでもない幸運に恵まれた人でも、市場の変動など一切おかまいなしに毎月一定額を投資しつづけた人と比べてリターンは0.4%高いだけであることを突きとめた。

つまり最高のタイミングで投資を続けること(要は完璧に機能する水晶玉を持っていること)による追加リターンは、たった0.4%だということだ。

実際に毎回完璧なタイミングで投資できる可能性は極めて低いのだから、着実に投資し続けるよりリターンは悪くなるだろう。

改めて書くが、直感に従うのは間違いだ。投資するのを待て、という頭のなかの囁きに耳を傾けるのが間違いなら、心の平穏を得るために投資資産を売却するのも間違い。投資ほど直感が災いするものはなかなかない。

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