在京民放キー局はすべて営利を追求する株式会社である。しかも一部上場している。最優先するのは「視聴者」ではない。カネを出してくれる「スポンサー」だ。だが、テレビ局はいまだに「視聴率」という指標しかスポンサーには示すことができていない。

そんななか、“手堅く”視聴率を稼げて、番組を配信に回したときにも一定数の再生回数を見込める旧Jのタレントは貴重な存在だ。旧Jを切って、「視聴率」を捨てるという選択肢はない。だから、事務所やタレントの不祥事には目をつぶり、見てみないふりをするのだ。

また、テレビ局には「横並び主義」という変な性癖がある。「ほかの局が非難してないのに、“最初に”うちが声をあげるのはどうか」といった遠慮や忖度が働き、わかっていても「だんまり」を決め込む。そして、このような「忖度」や「迎合」が、タレント事務所をモンスター化させてゆくのである。

このように、番組の出演者や事務所内の不祥事に関しては事務所に管理義務があるとして番組を放送するテレビ局は踏み込まないというのが、業界ルールになっている。いわば「他人事」を決め込んで、「監督責任」を逃れようとしているわけだ。その証拠となる事例を挙げたい。テレ東には、いまだ解決されていない「疑惑」がある。

放置される「おはスタ」疑惑

2023年8月、テレ東系列の子ども向けバラエティ番組「おはスタ」に出演していたお笑いタレントのアイクぬわら氏が、共演者で未成年の「おはガール」複数名を自宅に連れ込んだり誘ったりしたことが局内で問題視されていたことを『週刊文春』が報じた。その後、28日に突然番組を降板。9月には、ぬわら氏本人が『週刊文春』の取材に答えて釈明をしている。

「これが事実なら、ぬわら氏は未成年者略取や誘拐罪に問われる恐れがある」と一部メディアが報じている。テレ東としては、第三者委員会を設立して、事実を調査するべきだ。だが、1年以上経ったいま、その気配はまったくない。「番組制作上の都合」と説明しただけで、放置されたままである。

この「おはスタ」疑惑に関して、私は関係者への取材を試みた。しかし、誰一人として取材に応えてくれる人はいなかった。おそらく緘口令が敷かれているのだろう。そしてその実状がこの問題を複雑化している。もし、週刊誌が言うような行為がおこなわれていなかったのであれば、堂々とそう釈明すればいいではないか。

社内調査や第三者委員会設立などに関しては、どこからの強制力もない。あくまでもテレビ局が自発的に「やるべき」と決断する必要がある。しかし、いまのテレ東にはそういった対応は無理なのかもしれない。

ジャニーズ性加害と同様の子どもに対する行為が番組を通じておこなわれていたのであれば、言語道断、「悪質」としか言いようがなく、いまだに番組が続いていること自体が不思議だ。コンプライアンスの観点からもテレ東の監督責任は免れないはずである。それにもかかわらず、なぜテレ東はこの事件に対して無頓着でいられるのか。

そんなふうに一般常識とは大きくかけ離れているのがテレビ業界であり、そんな現実を自ら暴露してしまったのが、今回の「横槍電話」なのである。