記者の質問にテレ東は…

この横槍電話にはサイドストーリーがある。私がブログに書いたこの件を読んで、ある新聞社の記者から「ぜひ記事にしたいので、一度会って話がしたい」と申し出があった。会って話をして、その記者は「これなら上司は『やっていい』と言うと思います」と帰って行った。

しかし、取材は実現しなかった。その後「上司と相談したが、田淵さんの精神的負担を考慮し、インタビューはなしにします」という一方的な打ち切りの連絡が、メールで入ったのだ。「精神的負担? 何だ、それ」。怖気づいたのか、それともどんな忖度が働いたのか。そう思いながら、この問題に切り込むことのハードルの高さを改めて感じた。

10月31日におこなわれたテレ東の定例社長会見で、A氏からの電話について新聞社の記者から質問がされたと聞いていた。そのため、テレ東の公式発表を待っていた。だが、HPの議事録にはこの電話に関する質疑応答が記載されていなかった。

もちろん、紙幅の都合もあるだろうが、ほかの問答が丁寧に書かれているだけに、意図的に感じてしまった。もしこれが“意図的”だとすれば、“しら~っと”このまま無視する気なのだろうか。それでは私の人権を蹂躙するだけでなく、私のブログや論考でこの成り行きに注目している読者をも冒涜する行為だと言えるのではないか。

報道陣が詰めかけてインタビュー
写真=iStock.com/AleksandarGeorgiev
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「“テレビ東京として”そのような電話はしていない」

公式に明らかにされないのであれば仕方がない。会見に参加した複数の記者に取材をおこなうことにした。するとある事実が判明した。「田淵氏のブログによると、放送後にテレ東の方から『今後は元テレ東と名乗らないでほしい』と連絡が入ったというが、これについての事実関係はどうか?」という記者の問いに、広報担当役員は「お答えする必要はない」と言ったという。

「お答えできない」という言葉であれば、「まだしっかり調べられていないので、お答えできない」というようなニュアンスになろうが、「必要はない」という言葉には強気の姿勢が見え隠れする。そもそも、本件に関してテレ東は「当事者」の可能性があるのだから、ちゃんと答える必要も義務もあるのではないか。

また、広報担当役員の話を補足するかたちで、石川社長自らが「“テレビ東京として”そのような電話はしていない」と釈明したという。もしその主張が正しければ、「テレ東の発言だと思われると迷惑」というA氏の言葉はどう説明するのか。A氏は広報幹部である。そんな地位の人物がわざわざ電話してきたのは、テレ東上層部から何らかの指示があったからではないのか。

「なぜジャニーズ性加害問題が長年放置されたのか」を解くヒント

では、もしテレ東上層部が広報幹部にそのような指示を出していたとすれば、なぜ、わざわざそんなことをしたのか。

その答えに、「ジャニーズ性加害問題は、なぜ長年放置されてきたのか」という根本的な謎を解くヒントがある。まず考えられるのは、旧ジャニーズ(以下、「旧J」と省略)のタレントを今後は積極的に使っていきたいテレ東としては、OBである私のNHKスペシャル出演は旧Jからクレームを言われる危険性をはらんでいるため、「迷惑だ」と感じたのではないかということだ。