まさかの成績

このレポートが興味深いのは、中立的な立場から同一条件で多数のファンドを比較しているところだ。インターネット上で簡単に見つかるレポートだが、多くのプロがクライアントとのミーティングで話題にしているかは疑わしい。

ニコラ・ベルべ著、土方奈美訳『年1時間で億になる投資の正解』(新潮新書)

SPIVAの2022年中間レポートを見ると、プロが運用するアメリカの大型株ファンドのうち、過去1年の運用成績がS&P500指数を下回ったものの割合は55%、過去3年では86%、過去10年では90%だった。

中型株ファンド、小型株ファンドの運用成績も同じようなもので、成長株ファンドに至っては運用成績はさらに悪かった(その名のとおり「成長」をもたらすはずの商品だが……)。

こうしたデータが何を意味するかというと、プロが運用する投資ファンドのうち、長期的に株式市場全体を上回るペースで成長するものは10に1つもないということだ。

こうしたファンドを運用するのは“専門家”であるという点に注目してほしい。大学でこの分野を専攻し、仕事として打ち込み、個人では入手できないような人脈やリソースを持つ人たちだ。

レアな真珠の神話に惑わされてはいけない

モニッシュ・パブライのように長年市場を上回る運用成績を残してきたポートフォリオ・マネージャーもいることはいる。なかには今後も株式市場を上回りつづける者もいれば、リターンが落ちていく者もいるだろう。株価指数を大幅に下回る成績しかあげられない者も出てくるだろう。

ホースヘッド・ホールディングスの破綻によってパブライが大きな損失を出したのかはわからないが、おそらくそうではないだろう。致命的損失が出るのを避けるため、同社への投資額を総資産の10%以内に収めていたはずだ。亜鉛価格の下落や工場建設で問題が生じて株価が暴落するより前に売り抜けたかもしれない。

僕にわかるのはレアな真珠の神話に惑わされていたら、今の僕はもっと貧乏だったはずだということだけだ

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