2900社あった自動車メーカーは3社に

史上最も重要な発明の一つ、自動車の例で説明しよう。20世紀初頭に自動車メーカーに投資した人々は、おそらく自分には未来が見えていると思ったはずだ。実際そのとおりで、今では14億台以上の自動車が世界の道路を走っている。とはいえ自動車メーカーへの投資の多くは大失敗に終わった。

アメリカでは20世紀に入って以降、2900社以上の自動車会社が登場したが、そのほとんどが消滅した。同業者に飲み込まれたケースもあるが、事業を支える収入が得られずに倒産したケースのほうが多い。20世紀が終わる時点で、アメリカの自動車メーカーとして生き残っていたのはわずか3社だ(そのうちGMとクライスラーの2社は2007~08年の経済危機の際、連邦政府の救済を受けてなんとか倒産を免れた)。

自動車に続いて、飛行機が数十億人の仕事や旅行のあり方に革命を起こした。航空業界の競争も激しく利益はほとんど出なかったため、投資家が望んだ結果を得られることはまれだった。

株式投資の話をしていると必ず誰かが大麻の話題を持ち出したのは、それほど昔の話ではない。僕の母国カナダが、中毒性の低いドラッグである大麻を合法化しようとしていた時期だ。大麻を製造していた企業の株価は急騰した。

もしあの時ファイザーに投資していたら

大麻企業への投資が長期的に成功する見込みは低いと繰り返す僕に、双頭の怪物でも見るような目を向ける人は多かった。自分は金持ちになるための確実な方法を見つけたと思い込んでいたのだろう。誰のまわりにも、大麻業界に投資してほんの数カ月で資金が2倍、あるいは3倍になったという隣人やいとこがいた。

当時ニューヨークのナスダック証券取引所に上場していた国際的な大麻企業ティルレイの株価は148ドルだった。それが数年後には1株4ドルを切った。大麻が引き起こす空腹感を満たすことさえできないレベルだ。

降ってくるお金に喜ぶ男性
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こうした例からも明らかなように、世界を変えそうな企業を選んで未来に投資するのはそれほど簡単ではない。筋が通っていて、必ず儲かる保証が付いているような投資も、残念な結果に終わることが多い。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まり、世界中がパニックに陥った頃には、ワクチンは開発できるのか、それも世界中の人を守るのに十分な量を生産できるのかは誰にもわからなかった。

先見性のある投資家が、ファイザーのような多国籍製薬会社が記録的な速さでワクチンを開発できると予見したとしよう。実際、まさにそのとおりになった。パンデミックの始まった頃にファイザーに1万ドルを投資していたら、1年後には1万1900ドルになっていた。