加害者は「息をするように嘘をつく」

――具体的に、SNSを通じて詐欺が行われるというのはどのようなものがあるのでしょうか。

Facebookなどで、まったく知らない人から友達申請がくることはありませんか? しかも多くの場合、非常に容姿が魅力的な女性だったりする。友達申請を許可してしまうと、メッセージが来ます。最初は他愛もない話をするのかもしれませんが、徐々に「こんな儲け話がある」という方向に誘導されるんです。

あるいは、恋愛感情を抱かせて、「お金が足りなくて」というような話を打ち明ける“ロマンス詐欺”と呼ばれるものも存在しますね。

――いままで多くの加害者と対峙してきたなかで、彼らに共通する態度のようなものはあるのでしょうか。

息をするように嘘をつく、というのは共通しているかもしれません。それはどのような場面でも同じで、たとえば裁判所の証言台などのような一般的に厳かな場所においても、平気で嘘をつきます。調査し尽くされているような事実であっても、簡単に否定します。「(被害者とは)面識がありません」「詐欺を働いた事実はありません」「記憶にございません」など、まったく顔色を変えることなく述べます。

あとは身なりが非常に派手で、金があることをアピールする傾向は強いと思いますね。もっとも、それとは反対に質素な身なりをしていて、油断させて騙すタイプの詐欺師も存在します。

駆け出し弁護士時代に600万円をだまし取られる

――ところで、なぜ“詐欺撲滅”を掲げて活動するようになったのでしょうか。

私は大学卒業後、会社員をしていた時期があります。ただ会社にあまり馴染むタイプではなく、人間関係が煩わしいと感じる場面すらありました。そこで何かひとりでものんびりできる仕事をしたいなと思い、弁護士として独立開業すればよいのではないかと思い、司法試験に挑戦することにしたんです。

弁護士になって数年が経ったころだと思いますが、昔から知る友人から連絡がありました。簡単に言うと事業に対する投資をしてみないかということでした。月利5%くらいで運用しようという話ですね。しかしそうした事業の実態はなく、結論を言えばその話そのものが詐欺だったんです。金額で言うと、私は600万円近くを失うことになりました。

調べていくと、同一の加害者から私以外にも複数の被害者がいたことがわかったんです。そのとき、詐欺事件が横行している事実を知り、「これ以上、被害者も加害者も作ってはいけない」と考えたんです。弁護士として、詐欺を撲滅する活動をしたいと思い、現在の方向にシフトしています。

撮影=黒島暁生
スピネル法律事務所代表の杉山雅浩弁護士