“勝ち組”も被害者になっている

――一般的なイメージとして「詐欺に引っかかるのは情報に疎い人間」という印象がありますが、杉山弁護士のような人でも被害者になるケースはあるのでしょうか。

たしかに、一般的にそのような印象はあると思います。ただ、私の場合のように信頼していた知り合いから持ちかけられたりすると、判断力を失ってしまうケースも少なくありません。

相談に来る人のなかには、たとえば会社経営者、医師、弁護士、警察官などのように社会的に“勝ち組”とされるような人も相当数います。つまるところ、詐欺事件の被害者になるかどうかを考えるうえで、社会的地位や学生時代の偏差値のような指標はまったく判断材料にならないのです。状況次第では、誰しもが詐欺に引っかかる可能性があると私は考えています。

以前、詐欺師のトップリーダーから直接話を聞いた際にも「社会的な地位が高い“勝ち組”ほど騙しやすい人種はいない。『自分は騙されない』と思い込んでいるから、騙しやすい」と言っていましたからね。騙す側としても、社会的地位や学歴などはまったく関係ないどころか、むしろターゲットにしやすいのでしょう。

「ラクにたくさん稼ぎたい」という欲につけこんでくる

――詐欺被害に遭う人にはどのような共通点があるのでしょうか。

被害者にはさまざまな共通点があるので断言はできませんが、おおよその傾向はあると思います。一例ですが、社会的地位や収入にかかわらず、「今よりも楽をして金を稼ぎたい」と潜在的に思っている人は、詐欺師の口車に乗りやすいと思います。現状の仕事に辛さを感じていて、もっと楽に金を稼ぐことができるなら……という思いが判断を鈍らせることはありますよね。

それから、健全な投資ではなく特殊な種類の投資に興味を持っている人も、少し注意したほうが良いかもしれません。さっき申し上げたこととつながるのですが、王道を避けて違うルートで稼ごうとする場合、やはり詐欺師の話に耳を傾けやすいのは事実だと思います。

あるいは、「人の誘いを断れないタイプ」もまた注意が必要です。詐欺師は騙そうとして近づいてきますから、少々強く押されて受け入れてしまう人は被害者になりやすいのではないでしょうか。

総じて、人を信頼しやすく、大金であっても預けてしまうような人は、人間としては優しさがあるのかもしれませんが、詐欺師に付け込まれるスキがあるとも言えるでしょう。(後編に続く)

(聞き手、構成=ライター・黒島暁生)
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