逆に鬱を起爆剤にする

鬱に苦しんでいる時は、すべての光が消えて、一筋の希望も持てなくなる。ネガティブなことしか見えなくなる。これを乗り切るには、鬱を起爆剤にするしかない。

自己不信と不安は、裏を返せば、目的のない人生を生きるのをやめた証拠だ、と考えることにした。この骨折りは無駄に終わるかもしれないが、少なくとも生きる意味をまた見つけることができたんだ、と。

気分が落ち込む夜は、シャルジョ(編註 新兵勧誘官)に電話をかけた。シャルジョは早朝と深夜はいつもオフィスにいたんだ。心配させたくないから、落ち込んでいるとは言わなかったよ。

自分に気合いを入れるためだけに電話した。何キロ減量して、どれだけワークアウトしたかを報告すると、シャルジョはASVABの勉強も続けるんだぞ、と励ましてくれた。

了解!

『ロッキー』のサントラをカセットテープに落として、『ゴーイング・ザ・ディスタンス』で気分を上げた。自転車バイクの遠乗りや長いランをする時は、爆音で『ロッキーのテーマ』のホルンを聴きながら、BUD/Sで冷たい海に飛び込み、ヘルウィーク(入隊後に待ち構える、地獄のように厳しい訓練)を突破する自分を想像した。そうなれることをただただ願い、夢見ていた。

カリフォルニア州カンポ、2007年10月16日 SEAL資格訓練生(写真=米国海軍/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

「楽をしたい」という誘惑

でも体重が115キロまで落ちた時、BUD/Sの参加資格を得ることは、もう夢物語じゃなくなった。俺自身を含むほとんどの人が「不可能だ」と思ったことを達成できる可能性が、現実のものになっていたんだ。

とはいえ、スランプもあったよ。115キロを切ってしばらくたったある朝、体重を量ったら前日から0.5キロしか減っていなかった。これだけの体重を減らそうと思ったら、少しの足踏みも許されない。

6マイル(9.7キロ)のランと2マイル(3.2キロ)のスイムの間、俺は不安で頭が一杯だった。その後、3時間のサーキットトレーニングをするためにジムに着いた頃には、疲れと痛みでヘトヘトになっていた。

懸垂を数セットに分けて100回やってから、最後にもう一度懸垂バーに戻って、限界までやることにした。めざすは12回。でも10回目にあごをバーの上に出した時、手のひらに焼けるような痛みが走った。

何週間か前から「楽をしたい」という誘惑に駆られ、そのたびに踏みとどまっていた。でもその日はあまりの痛みに、11回で誘惑に負けて床に落ち、目標に1回届かないままワークアウトを終えちまった。