黒光りのゴキブリが地元の貴重な観光資源に
像の設置をきっかけにして例年秋に、ゴキブリ供養祭が実施されることになった。強烈な話題性は近年、SNSを通じて、次第に広がっていく。害虫駆除を手がける会社の視察のほか、遠方からわざわざ護鬼佛理天像を見に村を訪れる若者がいたり、バスツアーが寺に立ち寄ったりするようになった。近年は、世界各地からも参拝客が訪れているという。
嫌われ者のゴキブリが、地元の貴重な観光資源に転じたというわけだ。
「当初は怪訝な目でみていた檀家さんも、次第に慣れていきました。それどころか、今では寺や集落には欠かせない存在になっています。若者は高校で村を去り、普段は何もない寂しいところです。村そのものが消えようとしている中で、人を集められるものがほしいというのが先代住職の強い思いでした。うちの寺だから、こんな奇抜な像が建てられたと思っています。この寺では、ゴキブリと共生しているかって? いや、それは無理ですね。躊躇なく駆除しています(笑)」(美穂さん)
児島住職や南園社長の思いは結実した。
児島住職は2014(平成26)年に亡くなったが、供養祭は続けられている(コロナ禍の間は中断)。折しも来年2025(令和7)年は、その興産(現・SONO)の50周年と、児島前住職の十三回忌の節目にあたる。林泉寺では、同年秋に盛大なゴキブリ供養祭を実施する予定だ。