「ベールを脱げば神に罰せられる」と言われ育てられた

家父長的な宗教国家を描いたマーガレット・アトウッドのディストピア小説『侍女の物語』の映画を観て、アリネジャドは、イランと非常によく似ていると感じ、「これは西洋のフィクションですが、私にとっては現実です。私たちの日常生活なのです」と言った。

ベール着用の義務化は、一般のイラン国民のあいだでは次第に支持を失いつつある。だが、今でも賛否が分かれる問題であることに変わりはない。アリネジャドが回顧録『私の髪のなかの風(The Wind in My Hair)』で描いたように、1979年のイラン革命は、彼女の家族内に緊張をもたらした。

彼女の父親は、イスラム革命防衛隊の義勇軍に参加しており、道路を封鎖し、通行する車がアルコールや音楽カセットテープを積んでいないかをチェックしていた。政権はそれらを非イスラム的だと考えていたからだ。回顧録によれば、父親は彼女の道徳に反する行いが「悪魔を赤面させる」と口癖のように言っていたという。

アリネジャドは子どもの頃から、ベールを脱いだら、たとえ地球上では罰を受けなくても、神に罰せられると教えられて育った。だから、ベールを脱ぐという決断は、非常に難しいものだった。

「自分とコミュニティとのあいだのつながりや絆を失いたくなかったのです。母を悲しませたくなかったし、父を悲しませたくなかった」と彼女は震える声で言う。

無関係な兄が投獄された

アリネジャドの活動の結果、家族は、彼女を告発しろと圧力を受けてきた。彼女自身も中傷キャンペーンの標的になってきた。彼女が西側のスパイだという誹謗中傷もあった。2020年には、イラン政府が陰で糸を引いたとされる誘拐未遂事件の標的にされた。

彼女のアメリカ滞在中に兄がイランで逮捕され、のちに8年の懲役判決を受けたとき、アリネジャドは罪の意識に苛まれ、自殺したいと思ったという。

「なぜ私が罪悪感を覚えるべきなのでしょうか」と彼女は問いかける。「市民として平和的に抵抗した無実の人々を投獄した人こそ、罪悪感を覚えるべきです! 路上で女性を殴った人こそ、罪悪感を覚えるべきです!」