改革から30年たっても「裏金」はなくならない
海部・宮沢と二つの政権が潰れ、自民党は半壊し、6年の歳月をかけて政治改革関連法案が国会を通った。未公開株を政治献金がわりに政界にばら撒いたリクルート事件に端を発し、泉井事件(石油商の泉井純一が高級官僚への度はずれた接待、政治家への多額の政治献金が発覚)などが続いたことに対して、国民の怒りが爆発した。
とにかく「政治とカネ」の問題に終止符を打たねば、政治は有権者から見放されてしまう。ようやく6年後に政治家たちが自らの既得権をすこしだけ手放して出した答えが、この細川政権時代の政治改革だった。
その改革から30年が経った。ここで課題とすべきは、このとき選択された政治改革の進路がはたして適切だったのか、ということだ。
今日、安倍派議員のパーティ券収入の裏金問題が発覚したことを見れば、決して充分だったとは言えないだろう。再び、「政治とカネ」の問題で、政治に対して国民は大きな怒りに震えている。岸田政権をはじめ、政治家たちが国民のその声に答えることができるか。
しかし、これまでの流れを振り返ると、「政治改革」にはまだまだ正念場が長く続くことが予想される。
穴だらけの政治改革にうんざりする
では、なぜ政治改革はうまくいかないのだろうか。識者や政治のプロの意見など聞かずともわかることがある。
その理由のひとつは、小選挙区比例代表制が採用されれば、二大政党に収斂し政権交代可能な政治体制となる――という前提というか、その予測が外れてしまったことだ。
たしかに一度は民主党が2009年に政権交代をなし遂げたが、その後は二大政党制になることもなく、自民党とその他の政党体制に逆戻りしてしまった。野党らしい野党がないという点では、55年体制よりさらに後退してしまったと言えるかもしれない。(原稿執筆時点、2024年7月1日現在=筆者註)
小選挙区制では現職議員がかなり有利であり、二大政党にまとまっていくことは困難である。同時に、大きな政党ができないのであるから、政権交代のハードルも当然高くなる。
第二に、選挙制度改革に隠れてあまり議論せずに国会を通過してしまった「政党助成金制度」がもたらした副作用である。
政治改革の目玉であった「政治とカネ」の問題を解決するため、選挙や政治に掛かるコスト、その費用を国が丸ごと負担するという趣旨であった。同時に、政党以外の政治団体に対する企業献金の廃止を提唱していたが、実際は政治改革関連法案の審議のどさくさに紛れてなし崩しになり、現在まで政党への企業献金は続いている。30年前の悪夢が蘇ってしまった。うんざり、である。