世界最大手スーパーが発表した「消費者の実態」

ウォルマートが2021年11月に発表した「The Shopping Evolution(ショッピングの進化)」というレポートを見ると、顧客の半数が購買の意思決定を行ううえでソーシャルメディアが重要になってきていると回答し、48%の顧客がオンラインでリサーチしてから店舗で購買していると回答した。また、19%が店舗内で商品を閲覧するものの購入はオンラインで行うと回答している。配達についても、無料の宅配サービスを利用する顧客が85%いるが、短時間での宅配サービスを利用する顧客が49%、割引を受けるため遅延も許容する顧客も41%おり、検討・購入・受け取りのいずれにおいても消費者は臨機応変に選択している現状が見える。

小売業界の最新トレンドとして注目を集める言葉に「ショールーミング」「ウェブルーミング」がある。ショールーミングは店舗で実物を確認し、ネットでなるべく安く購入するパターン。ウェブルーミングは反対にネットで口コミやセール情報、在庫状況などを確認して店舗で購入するパターンだ。

そんな中、ショールーミングにより、売り上げや集客に成功しているユニークな事例が日本にある。三井不動産が運営する「ららぽーとクローゼット(LaLaport CLOSET)」だ。

写真=三井不動産提供
ららぽーとクローゼット海老名店

ららぽーとで増えている「試着だけの店」

三井不動産は全国に展開する商業施設・ららぽーとで、ショールーミング用店舗「ららぽーとクローゼット」を運営している。2021年に1号店をオープンし、現在は3店舗だが、業績好調のため今後10店舗への拡充を予定している。

ららぽーとクローゼットは、ららぽーとの公式通販サイト「アンドモール(&mall)」に出品されているファッションアイテムの実物をリアルに体感できる店舗で、最終的にはアンドモールで購入してもらう立て付けになっている。

開業当初は、アンドモールの商品を予約して試着できるサービスとしてスタート。複数ショップの商品をまとめて試着できる点で新しかったが、なかなか人気が出なかった。2022年からファッションに苦手意識を持つ顧客に照準を定め、3D骨格診断、カラー診断士による提案、プロスタイリストによるコーディネート、AIによる顔タイプやカラーの診断といった体験型サービスを始めたことで一気に利用が増え、商品を購入するアンドモールの売り上げも大きく伸びた。

写真=三井不動産提供
AIカメラによる「ファッション診断」などができるディスプレイ

ららぽーとクローゼットの事例も、「カスタマーセントリック(顧客中心主義)」の視点に立ったことが成功要因のひとつだと言えるだろう。