身寄りのない高齢者の暮らしには困難が潜んでいる
たとえば以前、NHKの番組で、腰が痛くて動けなくなった高齢者が119番に連絡して、助けを求める様子が紹介されていました。
このような場合、運よく電話が近くにあれば通報ができますし、近所にかけつけてくれる人がいれば助けを求められるのですが、そうでなければ、誰かが気づいてくれるか、なんとか立ち上がれるようになるのを待つしかありません。
救急搬送されるケースでは、財布や保険証を持たないまま、病院に運ばれることもありえます。パジャマ姿で運ばれたものの入院するほどではないと判断され、誰も病院にかけつけてくれなければ、靴もないまま帰宅しなければならないこともありえます。
また、高齢者のなかには口座振替やクレジットカードを利用しておらず、光熱費などをコンビニで支払うという人も少なくありません。入院して支払いに行くことが難しくなったら、携帯電話も止まってしまいますし、電気が止まれば、退院したときには冷蔵庫の中身は腐ってしまっているでしょう。
若い世代ならスマホを使って簡単に済む用事かもしれませんが、多くの高齢者にとっては、このような問題への対処は簡単ではありません。
いざ退院するとなったとき、筋力が落ちるなどして、自宅の入口の階段をのぼれなくなっていたらどうなるのでしょうか? 身体の自由がきかなくなった状態で、ひとりで生活環境を整えるのは至難の業です。
このように、身寄りのない高齢者の暮らしには、緊急時や日常の些細なことにも、さまざまな困難が潜んでいます。周囲の助けを得られない環境では、事態は容易に深刻化してしまうのです。