俺には“推し”がわからないけれど…

この「やりたい」重視の姿勢は3COINSの屋台骨とも言える。たとえば2017年に大ヒットしたのが「推し活」関連商品だ。

これも自身が推し活をしている女性従業員からの「こんなものがほしいけど、世の中にはない。だから作りたい!」との直談判がもととなった。肥後さんは、「俺にはわからないけど、それほどの熱量を持っている人がほかにいるのであれば、それは絶対にやるべきことだよね」とGOサインを出した。

最初に展開したのは、うちわを入れるための手提げとペンライトを入れるためのケースで、それぞれ白と黒の2色で展開。ユーザーからは「こんな商品を待っていた」と想像以上の反響が寄せられた。その後、推しの“色”に合わせたグッズも多数展開されるようになり、新たなヒットジャンルを創設した。

画像提供=パル
多種多様な推し活グッズ

推し活グッズはいまや、3COINS以外のショップでも見られるようになったが、「私たちが一つのトレンドを作り上げるきっかけとなれたことは嬉しい」と肥後さんは話す。

ほかに人気を集めているのは「コラボ商品」だ。もともと小売業界では、一般的に「二八(2月と8月)は消費が落ち込む」と言われている。それは3COINSも例外ではない。そのため「安定的に売り上げを立てるには」と考え、コラボ企画の実施に至った。

宇宙にも”幸せ”をお届け

最初にコラボしたのはアニメキャラクターとのコラボ企画。これも担当者の「やってみたい」に端を発したもので、大成功を収めた。その後も、次々と人気が高いコンテンツとのコラボを展開。

意外なところでは、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載される商品がある。

これは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が宇宙飛行士のQOL向上を目的とする生活用品アイデアの公募において、3COINSが提案・商品化を行い、ISSに搭載可能と判断されたもの。実際に2025年にISSへの搭載が予定されている。店頭では、素材などを変更した商品を3COINSで発売する予定。

「宇宙といっても、人が住んでいるのであれば、そこで“ちょっと幸せ”をお届けできると考えたのです」(肥後さん)

補足すると、ISSへの搭載が決まった商品には“宇宙ならではの特別難しい技術”が使われているわけではないという。肥後さんは「ただアイデアで勝負しただけ」と語るが、熱量に裏打ちされたこのアイデアの豊かさが、3COINSを支えている。