ごはんを主食にすると起こる変化
そしてもう1点、「朝食に小麦粉のパンだけ」という選択が、子どもの能力を邪魔しているかもしれない理由があります。
それこそが、本書(『受験メシ!』)でいちばんにお伝えしたい問題点です。
朝食は、英語で「ブレックファースト(breakfast)」。「ブレック(break)」は「中断する、壊す」、「ファースト(fast)」は「断食、絶食」の意味。
つまり、睡眠中の断食状態を破るのが朝食なのです。胃はすでに空っぽの状態。そこに「何」をどう入れるかで、1日の脳の状態は大きく違ってきます。
では、その「何」とは何でしょう? その答えは「糖質」にほかなりません。
糖質とは炭水化物から食物繊維を引いた栄養素の総称です。ごはん、パン、麺類などの炭水化物には、糖質が豊富です。ごはんもパンも同じように糖質は多いのに、なぜ、「朝食に小麦粉のパンだけ」は最悪の選択なのか?
ごはんを主食にすると、味噌汁や納豆、おかずなどを一緒に食べます。
一方、パンが主食の場合、菓子パンだけ、トーストにジャムを塗って食べるだけでも、食事としては十分に成り立ちます。
おかずや味噌汁と一緒にごはんを食べるのか、パンにジャムを塗っただけですませてしまうのか、この違いこそが脳の働きに大きな差を生む可能性が高いのです。
「集中力がない」「イライラしやすい」の裏に血糖値の変動
受験生をお持ちのお母さん、お父さんに、知っていただきたいことがあります。
それは、血糖値と脳との関係です。
「血糖値」という言葉。親御さんは、よくご存じかと思います。血糖値は血液中のブドウ糖の値であり、一般的には、糖尿病を診断する際の指標となる値です。そのため、問題になってくるのは、中高年以降と思われているかもしれません。
ですが、この血糖値、子どもにも重要な値です。なぜなら、血糖値は脳の働きに大きな影響を与えるからです。
じつは、「勉強しない」「集中力がない」「成績が思うように伸びない」「イライラしやすい」「怒りっぽくなった」「気持ちが不安定」などの裏に、血糖値の変動があるかもしれないのです。
そこで、血糖値と脳の関係をお話しする前に、まずは血糖値そのものについてから説明を始めます。
私たちが食事をすると、食べたものは、消化液の働きによって細かく分解され、小腸から吸収されます。
ごはんやパンなどの炭水化物は、ブドウ糖などの糖類に分解され、血液中に運ばれます。そして、血液中のブドウ糖の量が増えるにつれて、血糖値が上がります。
血糖値が上昇すると、すい臓から「インスリン」というホルモンが分泌されます。インスリンは、細胞にブドウ糖をとり込ませ、血糖値を下げる働きを持ちます。
簡単にいえば、細胞には「糖をとり込むためのドア」があって、インスリンはそのドアを開け、「どうぞお入りください」と糖を招き入れる“ドアマン”の役割。
そして、細胞内にとり込まれたブドウ糖は、エネルギーを生み出すために使われていきます。