「海外を褒める=中国をけなす」と曲解される

21年は柳条湖事件から90年の節目の年で、中国メディアは大々的にそれを宣伝。その年は中国共産党創立100周年も重なり、政府が国威発揚につながる言葉で、メディアを使って国民をあおってきたことも背景にあるのではないかと思われる。

当時、ある在日中国人からは、「最近、中国国内では、日本など海外を褒めること=中国をけなすことだと曲解され、SNSで猛批判を浴びてしまうことが増えました。ただ単に愛国といっても説得力がないけれど、具体的に“敵”(日本)の存在を強調すれば、説得力が増すからです。

アメリカに対しての批判もそうですが、戦争で戦った相手、日本への批判はとくにウケがよく、つい、そちらに流されてしまう(反日を主なテーマとして活動する)インフルエンサーも少なくありません。彼らは“商売”として反日をうたっていますが、それを真に受けて、反日と言いさえすれば、気分がスカッとするという人が一定数いるのも事実です」という話を聞いた。

中国は経済的に強くなったが、その独自のやり方やふるまいから世界では認められず、愛国教育を逆手にとることによって、日本や欧米批判に結びつけているとその人は話していたが、それは現在まで続いている。経済の低迷がますます過激な愛国へと傾いており、台湾問題もあって、一触即発の状況に近づいているとも感じる。

「習近平思想をわが子に教えたくない」という人も

記事の前半でも紹介したように、2012年に私が取材した際、中国の愛国教育は、日本で当時報道されていたほど過激なものではなく、授業のカリキュラムには含まれていなかったし、当時はSNSも存在しなかった。私が中国の若者に対して、このテーマについて取材して歩くことも、躊躇なくできた。

だが、今年1月の「愛国主義教育法」の施行により、今後は授業に組み込まれるだけでなく、家庭での教育にも取り込むよう、保護者は求められる。21年に始まった習近平思想を学ぶ教科書は、小学校から大学までの必修科目になったが、愛国教育はそれに加えて行われることになる。

昨今、中国から日本に経営者など富裕層が「潤」(ルン=移住するという意味の隠語だが、中国から逃げるという意味合いが強い言葉)して来ることが増えているが、その中には政治リスクや財産の保全などの理由だけでなく、「中国の愛国教育や習近平思想をわが子に教えたくない」という教育面での不安を理由とする人も多い。今後、中国の愛国教育が中国人に、そして、日本にどのような影響を及ぼすのか、再び悲しい事件が起きないことを切に望む。

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