12年前、北京・上海の反日デモで見た光景

私が初めて中国の愛国教育を意識したのは、今から12年前の2012年9月。尖閣諸島沖で日本の海上保安庁の巡視船と中国漁船の衝突事件が起き、それをきっかけに中国全土100都市以上で反日デモが行われたときだ。

深圳の児童刺殺事件が起きたのは今年9月18日で、中国で93年前、満州事変の発端となった柳条湖事件が起きた日だったことから「日本人を狙ったのではないか」という声が多くあがったが、2012年のデモは9月17日に行われ、同じく、中国では最も敏感な日の前日で、ナショナリズムが盛り上がっていると言われた。

その当時、私は9月上旬から北京と上海に出張しており、そのときの状況を現地の人々に取材して歩いた。日本のメディアでは、「デモをしているのは主に80后(バーリンホー=80年代生まれの人々を指す)の若者たちだ。彼らは愛国教育を受けて育った世代なので反日的なのだ」と報道していた。

むしろ日本に憧れを抱いている人が多い

しかし、実際に私が取材した数十人はそれを否定。そのときの取材ノートによると、彼らは、中国に漂う不穏な空気を感じとりながらも、日本に憧れを抱く人が多く、88年生まれの男性は、愛国教育について、こう答えてくれた。

「中国に反日教育はありません。そのような言葉はこれまで一度も聞いたことがないのですが、日本人からは何度も聞き、日本ではそう呼ばれていると知りました。

中国にあるのは愛国教育です。といっても、学校の授業に組み込まれているものではなく、たまに校外学習として、クラスの皆と愛国基地に行って見学するだけです。将来、共産党員になりたい人以外はレポートなどを提出する必要もありません。

歴史の授業では南京大虐殺など抗日戦争の歴史も学びますが、日本の近代史に関しては、明治維新の成功など、どちらかというと、日本の強さを紹介する内容のほうが私は印象に残っています。ですので、愛国教育は受けましたが、イコール反日教育とは言えない。若者が皆、反日的になるかというと、私は疑問です」