手を動かさないと解けない問題

仮に「x+y+z2=8をみたす0以上の整数x、y、zの組は全部で何通りあるか」という問題があったとします。

この問題、ただ問題文を眺めていても解けることはないでしょう。でも、「xにとりあえず1を入れるとどうなるだろう?」「zにはどんな数が入るんだろう、0は入るかな?」と、いろいろな数字を使って、与えられた情報をいじっているうちに、答えが出る問題なのです。

手を動かして具体的に計算していくと、いろんな気づきがあります。

「zは二乗なので、zが3のときは9になるから、答えにはならないだろうな」「ってことは、zには3以上の数は入らないな」とか、そういうことがわかっていくのです。

そうすると、「じゃあzは0か1か2以外ないわけだから、順番にz=0、z=1、z=2、と場合分けしていくほうがいいな」と方針が定まります。

実際に場合分けすると、z=0のときは9通り、z=1のときは8通り、z=2のときは5通りです。これらを足すと、「22通り」が答えになります。

この問題は、最初から「zには3種類の数しか入らないな」ということがわかるわけではありません。でも、手を動かしている中で、「この解き方も使えるんじゃないか」と手がかりが見えるようになるのです。

写真=iStock.com/domin_domin
※写真はイメージです

勉強しても成績が上がりにくい生徒の特徴

逆にこれらの問題で、まったく手を動かさずにただ「どうやって解くのかな」と考えていても、うまくはいきません。どんな答えが出るのか、解き方はどうなのかなどがわからない状態でも、とりあえず数字を入れたり書いてみたりすることで、問題が解けるわけです。

どんなに勉強しても成績が上がりにくい生徒は、「わからない問題を見たときに硬直してしまう生徒」です。わからなくても、「わかる範囲」のことを懸命に書いている生徒は、もしそのときの成績が悪かったとしても、後で必ず成績が上がっていきます。

今は数学の問題で説明しましたが、「手を動かすと伸びる」というのは、数学に限らず勉強全般に言えることだと思います。

文章を読んでいるときでも、人の話を聞いてちょっと整理したいときでも、メモを取って何かを書きながら聞いているのとそうでないのとでは、頭への入り方が全然違うのです。

他方、頭の中だけでただ、「どういうことだろう?」と考え込んでしまうと、頭がごちゃごちゃしたり、身体的に動きがなくて身体全体が強張ってしまい、頭の中が凝り固まってしまいがちです。

手を動かすと、自分がそれまで何を考えていたのかという思考過程を視覚的に捉えることができるようになって、「あれ? 何を考えていたんだっけ?」などと混乱することなく、思考が整理されるようになります。また「手を動かす」という身体的な行為をすることで、身体の強張りを解きほぐすことにもなります。