妻と息子はぜいたく三昧、夫は自炊で節約生活
外食も買い物も旅行も、Aさん抜きで妻と長男の2人きり。食事もAさんの分は作ってくれなくなりました。
そのため、Aさんは少しでも支出が減るように、安いスーパーを探して慣れない自炊を始めました。
同じマンションに住んでいるのに、ぜいたくな暮らしを続ける妻子に無視されながら、自分は節約生活……。そんな状況が2年続き、貯蓄が底をつきかけた頃、Aさんはもう限界だと感じて、賃貸の物件を借りて一人暮らしを始めました。そして、私の法律事務所に相談にいらっしゃいました。
「金の切れ目が縁の切れ目」
Aさんは、「金の切れ目が縁の切れ目だと言われたようでつらかった。離婚して自由になりたい」とおっしゃいました。Aさんから依頼を受け、離婚に向けた交渉を始めることになりました。
妻に連絡を取り、離婚したいという希望を伝えると、妻は「自分は何も悪くない、夫には自分たちを一生養う義務があるので離婚はしない。生活費も今まで通り給料全額を自由に使えるようにしてほしい」と連絡してきました。
別居中は、Aさんから妻に婚姻費用(別居中の生活費)を支払います。これは家庭裁判所で基準が決まっていて、夫婦の収入を基に算出されます。Aさんの場合は、役職定年で下がった後の年収が基準になります。その基準に基づいて計算すると、Aさんはマンションの家賃の分だけで、すでに婚姻費用より高い金額を払っていることがわかりました。
そこで、毎月家賃を払っているので、こちらからはそれ以上の負担はしないことを伝えました。
もちろん妻は、足りないと言ってきましたが、収入の基準通りに計算するとこの金額になることを伝え、Aさんは毎月家賃を払い続けました。
すると妻はお金に困り始めたのか、弁護士に依頼して、離婚に応じると連絡して来ました。
こうして離婚に向けた話し合いが始まりました。
とはいえ、持ち家も貯蓄もなく、まともな財産分与ができないので、妻に提示する条件は考える必要があります。そこで、マンションの家賃を長男が大学に進学するタイミングまで支払うこと、長男の養育費だけでなく学費も全額Aさんが支払うことを約束するという条件を提示しました(本来、学費は双方の収入割合に応じた負担額になります)。
Aさんの財産を開示すると、妻は「隠している口座があるはず」とかなり食い下がってきましたが、Aさんの財産は妻が把握している口座のみでした。他に株や不動産も持っていないため、分けるものは将来の退職金と年金程度でした。