50代の女性編集者が15歳の息子の携帯番号を選んだら…

そうした中、アラフィフの女性編集者がこの番号ヒエラルキーがきっかけでちょっとしたトラブルに巻き込まれたというので紹介させていただきたい。

この女性編集者には先日、2023年4月に高校生になった息子がおり、進学のお祝いに新しいスマートフォンを買ってあげることになったのだが、お子さんが2000年代生まれの若者らしく、前述のように電話番号の継続(080ナンバー)に全くこだわっていなかったため、中学校時代のスマホからの機種変ではなく、より安価に購入すべく新規契約を選び、新しい電話番号を取得することにしたそう。この際、大手携帯キャリアのカウンターで3つの電話番号が提示され、その中から選ぶよう指示されたのだが、そこに「080」ナンバーのほか、「090-3」から始まる番号があったのだ。

「これ、3ナンバーじゃん! ぜったいこれがいいよ」

母親は、女子大生時代ソバージュヘアに青みピンクのルージュで合コンに繰り出していたバブル世代。赤プリ(今はなき赤坂プリンスホテル)のラウンジで待ち合わせをした商社マンが、ハンドバッグのようにドコモのショルダーフォン(030ナンバー)を吊り下げてやってきて、「ここから電話できるんだ⁉」と物珍しさのあまり、通話料金がバカ高いのも知らず、友達に電話をかけさせてもらったこともある。

写真=時事通信フォト
歴代の携帯電話を紹介する「NTTドコモ歴史展示スクエア」の川村郁夫館長=2019年2月22日、東京都墨田区

「PHSで使われていた070なんてもってのほか、080もできれば避けたい。本当は090がいい」と思っていた母親。やや興奮気味に息子にいかに「090-3」番号がレアかを説き、息子も特に番号にこだわりがなかったため、この番号を選んだのだが、それが悲劇の始まりだった……。

あこがれの「090-3」は最近亡くなった高齢者が使っていた

使い始めて数日後、知らない番号からの着信が続き、その全てが老人からの間違い電話だった。そう、この番号は自動車電話時代から数十年にわたって携帯電話を使い続け、そしてお亡くなりになった方が使っていた番号だったのだ。

「ああ、やっとつながったわ。鈴木さん(仮名)、元気やったか」

おそらく何らかの理由で死去が友人たちに伝わっておらず、息子はその都度、もう新しい契約になっており、元の契約者にはつながらないことを伝えるはめに。「お母さんのせいでひどいことになった」とすっかり参ってしまった。

母親の編集者は、そういった電話がかかってくると代わって応対し、「この番号、今はうちが使っているので」と言ってみたが、中にはこちらの言っていることが理解できないのか、何度もかけ直してくる老人もいて、「もう、かけてこないでください」とお願いしても、「そんなこと言われても、(番号の元の持ち主に)連絡が取れないもんでね」と聞いてもらえない。ある高齢の女性は認知症なのか、説明した翌日にはまた電話をかけてきて「鈴木さん?」と始めから聞いてくる始末だった。