親族への依存は世代間で連鎖していた

「母は橋本と離婚したいと言っていました。橋本は、妹の学費に金がかかるようになると、母が自由に使える金を渡してくれなくなりました。事件前、母は、離婚したいから、僕に養って欲しいと言いました。それだけは嫌でした……」

希美は、被害女性との結婚を止めさせようと、女性に別れて欲しいと電話をかけたり、女性の勤務先まで押しかけて店のオーナーに別れさせて欲しいと迫ったこともあったという。女性にとってはたまったものではない。隼人は女性から別れを告げられていた。高価な贈り物やお金を送ったが、繋ぎとめることはできなかった。

阿部恭子『息子が人を殺しました 加害者家族の真実』(幻冬舎新書)

「本当は死刑になって死にたかったので、店の客を襲うはずでした。それが、店に入ろうとすると彼女が出て来て……、『マザコンとは結婚したくない!』と言われたんです……。傷つきました……。僕は母から逃げたかったんです」

隼人は、希美が女性との関係を壊したのだと母親を拒絶していた。夫と離婚した希美は、母親が亡くなったことによりその遺産で生活していたようだった。ところが癌になり、隼人の出所を待つことなく他界していた。

希美もその母親も、家族以外との関わりは希薄で、男性に依存し、子が成長しても子への執着が捨てられなかった。隼人は、家族への執着は世代間連鎖していると話していた。母と祖母の束縛から解放され、ようやく自立への道を歩み出している。

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