1年間で増える年金は、約1万3000円です。5年間働けば、70歳以降1年でもらえる額が約6万5000円増えることになります。この金額は厚生年金の「報酬比例部分」といいます。多く納めるとたくさんもらえます。なお、国民年金は60歳以後増えません。

このことを知らない人が意外と多いのです。日本マーケティングリサーチ機構が2022年1月に日本全国の10~70代の男女を対象に年金制度に関するインターネットを活用した一般調査を行なった結果を見るとよくわかります。

「年金制度が改正されて、65歳以上の労働者の年金が増えることを知っていましたか?」の問いに対して、「知っていた」と答えた人は約33.7%、「知らなかった」と答えた人は約66.3%でした。

専業主婦の期間が長かった人もOK

さらに、60歳以降、年金を増やせる制度があります。経過的加算という制度です。難しそうに聞こえますが、シンプルに説明すると厚生年金の加入期間40年、つまり480月になるまで別の形で加算される年金です。

給与が、社会保険に加入できる最低金額の月8万8000円以上などの条件に当てはまれば、給与の額にかかわらず年間約2万円上乗せされます。

ただし、全ての人がもらえるわけではありません。どんな人が対象になるかというと、60歳時点で厚生年金の加入期間40年(480カ月)に満たない人です。

厚生年金加入期間が480月に満たない人は、60歳以降も引き続き働くことで、この経過的加算がつきます。

社労士みなみ『もらう×増やす×出費を減らす 年金最大化生活』(アスコム)

70歳までの間、厚生年金加入期間が480月になるまで、経過的加算がつくのです。

すぐに思い浮かぶのは、専業主婦の期間が長かった人たちでしょう。例えば、20歳から10年間会社員として働いた女性がいます。30歳で結婚して、子育てのために仕事を辞め、夫の扶養に入っていました。そして子育てが一段落した頃にパートタイマーで10年間働きました。

この女性の60歳までの厚生年金加入期間は20年です。経過的加算は厚生年金の加入期間が40年になるまでつくので、この女性がさらに60歳から10年間働くと経過的加算がつきます。

最低限働いて在職定時改定や経過的加算をつけたほうがずっとお得

経過的加算は給与額に関係なくつくので、この女性が月額8万8000円で社会保険に加入しながら1年間働くと、報酬比例部分も含め年金を約2万5500円増やせることになります。

60歳から5年間働くと年12万7500円、10年間働くとざっくりとした計算ですが、年25万5000円も増えるということです。

年金最大化のためには、特段の事情がない限り、最低限働いて在職定時改定や経過的加算をつけた方がずっとお得です。

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