「年金繰下げ」で得をするのは“受給年齢プラス11歳”

「さすがに、それはきつい」という方もいるでしょう。しかし、1年繰下げればその後の年金収入が65歳時点より8.4%も増やせるわけですから、できる範囲で1年でも2年でも繰下げれば、その後の暮らしがかなり楽になります。

65歳を過ぎても年金以外の収入がある人や、当面は蓄えで生活できる人、大きな病気をしていない人などは繰下げ受給を検討してみてはいかがでしょうか。

特に、将来受け取る年金額が少なく、老後のお金に不安を感じている人や、平均寿命が長い女性は繰下げ受給がお勧めです。

1カ月でも、2カ月でも遅らせると、それだけ増えるのですから、もらい始めるぎりぎりまで考えていいと思います。

繰下げ受給の話をすると、「長生きしなければ、結局は損することになりませんか」と、よく聞かれます。たしかに、年金が増えても、思っていたより長生きできなければ損になります。

それでは、どれくらい長生きすると、「繰下げ受給してよかった」となるかというと、分岐点となるのは、もらい始める年齢プラス11歳です。66歳なら77歳以上、70歳なら81歳以上、75歳なら86歳以上長生きできると、得することになります。

日本の老人
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「繰上げ受給」は長生きするほど損

年金は、もらい始める時期を遅らせることもできますが、逆に、65歳より早めることもできます。具体的には、60歳からもらうことができます。これが、「繰上げ受給」です。

年金をうまく使うためには、覚えておいて損はありません。もちろん、早くからもらえるという大きなメリットがある反面、もらえる年金が少なくなるというデメリットがあります。

繰上げたときの減額率は、1カ月で0.4%。1年早めると、0.4×12カ月で、4.8%の減額です。60歳からもらい始めると、なんと24%の減額になります。しかも、その年金額が一生続きます。

例えば、年額150万円の年金をもらえる予定だった人が60歳からもらうようにすると、年額114万円になってしまうということです。

0.4%という減額率は、2015年度簡易生命表による平均余命をもとに算出されたものです。平均余命とは、各年齢に達した人たちがその後平均して何年生きられるかを示したもので、65歳時点の平均余命は男性19.44歳、女性は24.3歳です。

この数字をどう受け取るかは人それぞれですが、減額率の設定は、いつから受給しても87歳まで生きると同じくらいの年金総額になるように設定されているといわれています。

それでは、どのくらいまで長生きすると、「繰上げは損だった」ということになるのでしょうか。

長生きして損というのも変ですが、繰下げ受給とは逆の見方ですね。そもそも、年金は高齢で働けなくなった時のための所得保障であり、損得で考えるべきではないのですが、この点に関心を持たれている方がすごく多いので説明します。