できるだけ多くの年金をもらうにはどうすればいいのか。『もらう×増やす×出費を減らす 年金最大化生活』(アスコム)を書いた社労士みなみさんは「年金は『繰下げ受給』で増やすことができる。たとえば、受給開始を10年遅らせ、75歳からもらい始めると84%が上乗せされる。そんな指摘をする記事は多いが、年金を増やす方法はそれだけではない」という――。
年金手帳
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「ねんきん定期便」を見ても“本当の年金額”はわからない

あなたが想定している年金額は、ねんきん定期便に記載されている見込額だと思います。実は、その額をそのままもらうとは限りません。年金の額は増やすことができるのです。ただし、何もしないとそのままです。では、どうすればいいのか。

その方法を、これから具体的に紹介します。

政府が整えている制度をフル活用するため、まったくリスクはありません。投資のように、増えるかもしれないが、減るかもしれないという方法ではありません。むしろ、政府が整えている制度を知らない方がリスクともいえます。知らないことで、もらう権利のあるはずのお金をもらえない可能性があるのです。

その方法を、まずは知ること。そして、実践することです。それでは、一つずつ紹介しましょう。

最初にご紹介するのは、「繰下げ受給」です。

繰下げ受給とは、年金をもらい始める年齢を遅らせる方法です。年金をもらい始める年齢は、原則65歳です。まだかまだかと待っている人もいるかもしれません。けれど、もらう時期を少し後ろにずらすだけで、もらえる年金額が増えるのです。

1年受給を遅らせるだけで8.4%増やせる

少し後ろにずらすとはどのくらいでしょうか? それは、65歳から1年間です。66歳以降は、好きなタイミングで、1カ月単位で遅らせることができます。繰下げると年金が増える、という話を聞いたことがある人もいるでしょう。しかし、実際のところどれくらい増えるかご存じでしょうか。

実は、1カ月遅らせるだけで、0.7%の上乗せになるのです。

「え、たったの0.7%?」と思うかもしれませんが、仮に1年遅らせると0.7の12倍ですから、8.4%増えるということです。

上乗せ率は66歳以降、1カ月単位で加算されていくため、5年遅らせて70歳からもらい始めると42%、10年遅らせて75歳からもらい始めると84%も上乗せされます。例えば、65歳で年間150万円の年金を受け取る予定だった人が、70歳まで繰下げると213万円、75歳まで繰下げると276万円に増額されるということです。

そして、その年金額を死ぬまでもらい続けられます。もちろん、75歳まで繰下げて年金額が増えたとしても、人生が80年で終わるとちょっと残念です。それに、繰下げのメリットを最大限享受するならば、75歳まで年金なしで暮らせることが前提になります。