財政健全化の本気度が試される経済対策の規模

そうした見方を裏付けるように、石破首相は10月4日、経済対策の策定を指示した。各種報道によると、3本柱に「物価高の克服」、「地方を含めた経済成長」、「国民の安全・安心」を据え、物価高対策としての低所得世帯向け給付金、「重点支援地方交付金」による地方創生、国内投資促進策、中堅・中小企業の賃上げ支援、能登半島などの災害復旧、防災体制強化などが具体策となる模様である。

鳳至小学校(石川県輪島市)の避難所を訪問する石破首相(写真=首相官邸ホームページより)

経済対策の中身は10月27日に予定される衆議院選挙のあと、正式に決定され、その実施のための補正予算案が国会に提出される手順となるが、注目すべきは補正予算の規模であろう。その多寡や財源によって、石破政権の財政健全化に対する姿勢が垣間見られるからである。

補正予算の規模を大きく左右するのは財源であるが、定番だった「前年度剰余金」は今年度から防衛予算に充てられることが決まったため、使えなくなった。そのため、税収の上振れが財源の中心となるが、景気が回復傾向にあり物価が上昇していることを考慮すると、1~2兆円程度は積み上がる可能性はあろう。

「国債増発」が試金石になる

また、同じく定番の「既定経費の削減」、つまり不要となった予算は、毎年余裕を持って計上する国債費を中心に少なくとも1兆円は見込めるのではないか。

そのほか、特別会計などからの「税外収入」や、6000億円ほど残っている予備費の取り崩しも合わせると、総額3~5兆円程度の財源が捻出できそうである。仮に真ん中をとって予算規模を4兆円とすれば、600兆円に達したGDPの0.7%程度となる。

昨年までの10兆円を超える大規模な経済対策に比べると少ない印象は拭えないが、デフレの原因となる需給ギャップ(供給力-需要)は、内閣府の試算によると2024年4~6月期時点でGDPの0.6%につき、それを埋め合わせてデフレ圧力を解消するに足りる規模ではある。

より大規模な経済対策を打ち出したいのであれば、財源は国債の増発、つまり財政赤字の拡大に頼るしかない。その意味で、石破政権が国債増発をしてまで予算規模を追求するかどうかが、財政健全化に対する意識を見極めるための試金石となる。

利上げは容認するも条件付き

2つ目の誤解、利上げ容認について、石破首相は総裁選に際し「日銀の独立性を重視する」としていたが、同時に「経済や国民生活に支障がない範囲・ペースでの正常化を期待する」ともしていた。つまり、もともと緩やかな金利上昇を志向していたと考えられる。

ところが、総裁選後には「今の金融緩和の方向性はこれから先も維持しなければならない」とし、金融政策の正常化を急がない姿勢に修正した。さらに、10月2日の日銀植田総裁との会談後の記者会見では、「現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と利上げに否定的ともとれる姿勢を示した。