不安日記で見えてくること

1週間後の診察の際に、吉岡さんはご自身の不安日記(週間活動記録表)を見せてくれました。

図表2の不安日記は、吉岡さんの記録を一部抜粋したものです。

「活動記録をつけてみて、いかがでしたか?」

「めんどくさがり屋の私には取りかかるのに抵抗がありましたが、やってみたら意外と面白く、それに記録をつけてわかったことがありました。

まず、先生がほかの患者さんもそうだとおっしゃっていましたが、私もインターネットでがん患者さんのブログを見ているあいだは、かなり不安になっていました。ブログの患者さんの病状が思わしくなくて、更新が途切れたりすると、自分も厳しい状況になるのではないかと想像して不安になります。また、土曜日はブログを見たあとで散歩に行って気持ちを切り替えられましたが、日曜日は何もしないでいたら、不安な思いが続いて苦しかったです」

「インターネットを見るのをやめて、さらに何もしない時間を減らしたら、比較的穏やかな時間を過ごせませんか」

「そう思います。ただそれでもふと心配になって、病気のことが頭から離れなくなってしまう状態はありそうです。そんなときに何かいい方法はあるでしょうか」

吉岡さんの記録を一部抜粋『不安を味方にして生きる: 「折れないこころ」のつくり方』(NHK出版)P43

ありのままに目を向ける

不安が高まる行動をやめても心配事が頭から離れないとき、どうしたらいいのでしょうか。その答えは、「マインドフルネス」という考え方にあると私は思います。

マインドフルネスは経験や先入観にとらわれず、「過去や未来ではなく、いまこの瞬間に起こっていることに集中する」状態を指します。マインドフルネスを実践すると、脳の疲れがやわらぎ、集中力や幸福感などが高まることから、多くの人が興味をもつようになりました。生産性やストレス耐性の向上もあり、ビジネスの領域でも注目されています。欧米で発展を遂げたマインドフルネスですが、東洋の瞑想めいそうにルーツがあります。