県議に「肩透かし」を食らわせた

いちばん重要なのは26日まで「辞職」「県議会解散」「失職」のいずれを選ぶのか、手の内を明かさなかったことである。

ふつうに斎藤氏の手の内を読めば、「県議会解散」の可能性が高いと見ておかしくない。県議会へしっぺ返しを食らわせる「反撃」は唯一、「県議会解散」しかないからだ。

その「反撃」を想定して、県議全員が自分たちの選挙戦に奔走せざるを得なかった。選挙準備に大忙しとなった。

斎藤氏は、県議たちの思惑を外して肩透かしを食わせたのである。

それだけではない。「失職」となれば、すぐに知事選となる。県議たちはその動きについていけなかった。

6月に百条委員会が設置され、7月に疑惑を告発した元西播磨県民局長が死亡。その直後、県政混乱の責任を取って片山安孝副知事が辞職している。

その後も斎藤氏への批判は収まらず、9月19日に不信任決議案が可決、知事選となるのは確実だった。

それなのに、各党各会派の動きは鈍かった。

前回選で斎藤氏を推薦した自民党、日本維新の会などはそれぞれ独自候補の擁立を模索しているが、いまとなっても知事候補を決められず、不透明な状況が続いている。

「県議会解散」を斎藤氏が選ぶと考え、知事選はそのあとと考えた。県議会議員たちは自分たちのことで精いっぱいとなり、知事選どころではなかった。

兵庫県議会Facebookより
9月県議会の様子。斎藤知事は議会解散を選ばなかった

斎藤氏の「予想外の動き」

発行部数約40万部の神戸新聞は、兵庫県政を巡る混乱について、ほぼ2カ月前の8月2日から4日まで「瓦解 斎藤県政3年」と題する連載記事を掲載した。

4日付朝刊は、「『ポスト斎藤』探る動き加速」という見出し記事を掲載したが、新たな知事候補を巡る動きについて具体的な言及はなかった。

何よりも「ポスト斎藤」だから、「斎藤」は消え去るものと思っていたのだろう。

「孤立無援」となった斎藤氏が、まさか出直し選挙に出馬するとは考えていなかったのかもしれない。

斎藤氏の動きを押さえていなかったのだ。