たんぱく質が不足しやすい理由

私たちの体を構成するたんぱく質は日々、分解と合成を繰り返していますが、食事からたんぱく質が常に供給されることで、体内のたんぱく質量が維持されています。ある程度以上の強度が高い運動をしながら、十分なたんぱく質を摂ると体内のたんぱく質はプラスに。反対に体を動かすことがなかったり、たんぱく質の摂取量が低下したりすると、主に筋肉が分解されて体内のたんぱく質はマイナスに傾きます。

30歳を過ぎると、特別に意識していない限り筋肉量は緩やかに低下していきますが、高齢期になるとガクッと筋肉量が減少する人がいます。これは高齢になるほど筋肉合成のためのスイッチが入りにくくなり、食事から摂取するたんぱく質量が多くないと合成のスイッチが入らなくなるためです。

成年期であれば、体内のたんぱく質量を維持するために必要な1日のたんぱく質量は、体重1kgあたり約0.8gと考えられています。つまり、日本人の平均的な体型の30歳男性(体重70kg)では1日約56gという計算になります。一方、高齢者では体重あたり約1.0~1.2gが必要とされるため、平均的な体型の70歳以上(体重62.4kg)の高齢男性では少なくとも1日約62.4gも必要な計算になり、十分な量のたんぱく質を確保することの難しさがわかると思います。

さらに年齢を重ねるとエネルギー消費量が少なくなり、必要な食事量も減るため、少ない食事で若い頃よりもたくさんのたんぱく質を摂らなければならず、これが高齢者のたんぱく質不足の大きな原因です。

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たんぱく質をしっかり摂るには?

たんぱく質が多い食べ物といえば、肉や魚、卵といった動物性の食品を思い浮かべる人が多いと思います。実際にその通りなのですが、意外とご飯や小麦といった穀類にも多く含まれており、大事な供給源です。たんぱく質が不足しないための秘訣は、毎食しっかりとたんぱく質源になる、肉や魚、卵などの主菜とごはんなどの主食を用意し、1日の中で豆類や乳製品を取り入れることです。飲み物の牛乳、胃もたれの少ない豆腐は、量を摂りやすいので、重量あたりのたんぱく質が少なくても高齢者にとって有用な食品といえるでしょう。

【食品100gあたりのたんぱく質量】

食品名/100gあたりたんぱく質量

豚ロース肉 19.3g
豚バラ肉 14.4g
豚ヒレ肉 22.2g
シロ鮭 22.3g
カレイ 19.6g
卵 12.2g 1個約7g
絹ごし豆腐 5.3g(1人前150gで8g)
牛乳 3.3g(200mlで約7g)
ヨーグルト 3.6g

高齢になると料理の負担や買い物の困難により、毎食バランスのよい食事を用意することが困難になります。これもたんぱく質不足や低栄養の大きな要因です。加熱するだけで食べられる冷凍パックの煮物やレトルトの丼物、保存の効く卵や魚の缶詰などを常備するのもおすすめです。

歯が悪くて噛めない、胃もたれがするなどの理由で、肉や魚を食べる頻度が少ない場合には、卵や乳製品で補えるよう意識しましょう。和食に牛乳を加えた「乳和食」のレシピを調べると、参考になるかもしれません。