敗退行為は永久追放

動画を見る限り、佐藤は金子の捕邪飛を追いかけて捕球しようとしていたように見える。もし、佐藤がわざとファウルを捕球しなかったのだとすると問題だ。

野球協約 第18章 有害行為 第177条(不正行為)

選手、監督、コーチ、又は球団、この組織の役職員その他この組織に属する個人が、次の不正行為をした場合、コミッショナーは、該当する者を永久失格処分とし、以後、この組織内のいかなる職務につくことも禁止される。

(1)所属球団のチームの試合において、故意に敗れ、又は敗れることを試み、あるいは勝つための最善の努力を怠る等の敗退行為をすること。

佐藤の行為は、少なくとも「勝つための最善の努力を怠る等の敗退行為」と見なされる可能性がある。

1970年代、野球界の屋台骨を揺るがした「プロ野球黒い霧事件」では、パ・リーグ球団の主力選手が敗退行為を行ったと見なされ、永久追放になっている。

敗退行為は、プロ野球選手にとって最も避けるべき行為になっているはずだが、いつの間に「引退試合に関してはこの限りではない」という注釈がついたのだろうか。

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引退試合にある微妙なプレー

スポーツ紙記者や解説者は、ロッテの佐藤や西武の古賀が「わざと捕球しなかった」としているが、筆者は佐藤のためにも「最善の努力をしたが捕球できなかった」のだと信じたい。

もちろん、こうした選手が故意に「敗退行為をしよう」と意図したのでないことは、承知している。引退する選手に対する「はなむけ」の意味で気を利かせたのだ。善意だといっても良い。しかしこれはエキシビションではなく、一軍の公式戦なのだ。

さらに、西武は最下位に沈んでいるが、ロッテは楽天と激しい3位争いをしている最中だ。ロッテの選手が、西武の引退選手に手心を加える余裕などなかったはずだ。この時の西武の本拠地での4連戦で、ロッテは1勝3敗と負け越した。ロッテの吉井理人監督は「戦いにくい」と感じていたのではないか。

とにかく引退試合を巡っては、スポーツに必要な「白黒はっきりつける明確さ」が失われて「微妙なプレー」が起こることが多い。

一方で、9月13日に引退を発表したヤクルトの青木宣親は、8月3日に一軍登録を抹消されたが、9月18日に再登録されると、広島との2連戦、さらに中日戦と3試合連続で安打を放った。

優勝争いに必死に踏みとどまろうとする広島投手陣は、青木に花を持たせるような投球はできなかったはずだ。青木は実力で安打を打ったとみられるが、それも推測にすぎない。