留意しなければならないのは、配信を主とするライツ事業の比重が高いテレビ東京であるからこそこれらの傾向が顕著に表れているという事実だ。数字には表れてないが、ますます日本において配信プラットフォームが勢力を拡大している現状において、“ライツ事業が頭打ちになる”という危機感を抱いているのは他局も同じなのだ。

そんなビジネス環境のなかで「救世主」となりうるのが、フォーマットセールスなのである。では、本当にフォーマットセールスはもうかるのか。

番組フォーマットのライセンス料は、番組制作費の10%前後と言われている。番組の内容や種類によって異なってくるので一概には言えないが、例えば1時間枠の制作費が5000万円だとすると、1本あたり500万円の収入がある計算だ。2005年からアメリカで放送された「Iron Chef Ameria」は138回の放送だったので、それだけで6億9000万円になる。まさに「打出の小槌」だ。

以上の前例から、「フォーマットはまずアメリカに売る」ということが定番となっている。世界市場でのフォーマットセールスの主要クライアントはアメリカだ。アメリカで人気が出た番組は世界中に広がる。そのため、海外販売を目指すうえで、まずはアメリカで人気が出る企画を考案することになる。

「地上波ファースト」を捨てたテレ東の優位性

以上のようなテレビ局を取り巻くトレンドを受けて、従来の「TVチャンピオン」の「手先が器用選手権」は「TESAKI」へと生まれ変わったのである。

ここまでの分析で、読者の皆さんには、NHKも含めたテレビ局が国際市場においてどれほどの過当競争に置かれているのか、そしてそのなかでどんな方針を採るかで局の命運を決めることになるかという現実について充分に理解してもらえたのではないかと思う。

そこで、ここからは民放各局が「生き残り」をかけて、いかに巧妙に映像ビジネスの戦略を立てているかを検証してみたい。重要なのは、「逆境」に対してどのような策を練っているかということだ。

その点において、私はテレ東に優位性があると確信している。それはここまで述べてきたように、「地上波ファースト」を捨てて「放送外収入」にいち早く舵を切ったテレ東の先見性を評価しているからである。

しかし、この「先見性」は単なる偶然かもしれない。また、一時的な出来事かもしれない。それらが「本物」であることを実証するために、以下に論拠を示しながら「TESAKI」がこれからのフォーマットセールス市場において果たす役割を明確にしてゆく。

「手先が器用選手権」から「TESAKI」へと、より優れたものに改変できていると私が確信する点は、以下の4つの要素である。

1 “共感できる”ものである
2 “普遍的”である
3 “ローカル”である
4 “ゲーム的”である