日本の賃貸住宅はすきま風だらけ

このように、断熱性能向上の取り組みは、諸外国に比べて非常に遅れています。ところが、それ以上に、すきま風のない家である「高気密化」への取り組みは、圧倒的に遅れています。断熱性だけ高めても、すきま風だらけの家では、意味がありません。

そのため、諸外国では気密性能に関して厳しい基準が定められています。気密性能は、C値という指標で示され、値が小さいほど高気密であることを意味します。

図表3のように、例えばドイツでは0.3cm2/m2以下、ベルギーでは0.4cm2/m2以下といった基準があります。

ところが、日本は基準が緩いどころか、気密性能に関する基準自体が存在していません。以前は、5.0cm2/m2という非常に緩い目安の基準があったのですが、現在はその基準すらなくなっています。

高気密住宅にするためには、木造もしくは鉄筋コンクリート造が向いており、鉄骨造は向いていません。著者が知る限りでは、鉄骨造の大手ハウスメーカーで気密性能を売りにしている会社は存在しません。

鉄骨造が気密性能の確保を苦手にしているのは、鉄は温度による伸び縮み(線膨張係数)が木の2~4倍と大きいため、気密層が維持できないためではないかと言われています。

大手ハウスメーカー系の賃貸アパートは、鉄骨造が多くなっていることもあり、気密性能を確保している賃貸住宅の供給はほぼないのです。

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断熱・気密性能が高い賃貸住宅はほぼない

断熱・気密を十分な性能にすると、普通の暮らし方をしていれば結露が起きなくなることを知らない方が意外に多いようです。

当社が独自に行ったアンケート調査の結果では、「高断熱住宅では普通の暮らし方をすれば結露は生じないことを知っていますか?」という設問に対して、約3割の方が、「信じられない」と回答しています。

ちなみに、欧州では、新築住宅では結露は起きてはならないもので、結露が起きると、施工者や設計者は責任を問われるそうです。

なお、日本は高温多湿で、欧州とは気候が異なるので、結露が生じるのは仕方がないと思っている方が多いようですが、それも誤解です。

人口の多い太平洋側の気候は、夏期は高温多湿ですが、冬は湿度が低くなります。結露は、主に冬の問題ですから、少なくとも太平洋側の気候が欧州に比べて結露が生じやすくて仕方がないということはありません。

十分な断熱・気密性能を確保している賃貸住宅の供給はほとんどないため、残念ながら賃貸住宅では結露が生じるのが当たり前になっているのです。