ローカル局の今後

こうしてDXの導入で成功する局があるものの、大半のローカル局は残念ながら通販では躍進してきませんでした。コロナ禍で自宅にいながらモノを買う行為が習慣化したにもかかわらず、工夫や努力を怠ったためビジネスチャンスを見逃してきたのです。

ローカル局全体を見渡すと、その経営は芳しいものではなく、今後も悲観的にならざるを得ません。視聴率が下落し、ピーク時と比較して既に2割減った広告収入は、今後もまだまだ減少すると見られているからです。しかし、ここでこれまで窓際的な扱いをしていた通販枠を、DXを駆使しながら革新すれば、経営改善は可能です。

冒頭で触れたように、通販番組の放映時間の9割以上が29分です。しかも2枠連続して放送するケースも見かけますが、これでは普通の視聴者は逃げてしまいます。そこで、これを5~10分程度の通常番組と、同程度の尺の通販枠を交互に編成すれば、間違いなく視聴率は上がります。つまり通販でのコール数や販売量の改善が期待できるのです。そうすれば、枠の単価も上がります。

さらにアニメなどと通販枠を組み合わせたらどうでしょう。

現状、テレビ通販の顧客は圧倒的に高齢者に偏っています。ただ、コロナ禍に40~60代やもっと若い層も通販でモノを買うことが確認されました。これまでは化粧品や健康食品がメインの商材でしたが、もっと多様な商品も扱えるはずです。通販枠では商品のスペックや使い方の詳細を説明する時間がたっぷりあります。年金頼りの高齢者より収入が多い現役世代を対象にしたもっと単価の高いモノを売れば、枠の価値は高まります。

PTP社「ordr」の資料から

もともと横並び意識の強いテレビ業界。視聴率競争には一生懸命でしたが、“端っこ”の通販枠を重視しなかった点でも“右に倣え”でした。ところがデータに基づくDXを進めると、通販枠はより効果的に編成でき、枠の単価を高められ、局の増収増益に貢献する道が見えてきました。

厳しい経営の中、復活へと歩み始めるテレビ局の登場に期待したいところです。

関連記事
金20個でも"若者離れ"は避けられなかった…男女50歳以上ばかりが熱狂した五輪中継で一番見られた「球技」
だから「感動の押し売り」と批判されてしまう…46年前の第1回「24時間テレビ」にあって現在の放送にないもの
視聴率・募金額は悪化するばかりだが…感動ポルノと言われても日テレが「24時間テレビ」をやめない本当の理由
こうして日本人の「新聞離れ」が進んでいった…「エモい記事」を大量に生み出した新聞記者たちの悲劇的な結末
首都圏の2倍の料金に目がテン…「青森移住10年」でわかった"日本一の短命県&生活費バカ高"のカラクリ