誰もが参加できる一般参賀

では、1月2日の新年一般参賀はどうか。

新年祝賀の儀の場合は参列者が三権の関係者などに厳しく制限されているのとは対照的に、誰でも自由に参加できる開放性が特徴だ。しかも、参賀者は皆、同じように扱われ、特定の人たちが社会的地位などを理由に特別な待遇を受けることがない。

参賀者は皇居正門から入って鉄橋てつばし(いわゆる二重橋)をわたり、宮殿の東庭とうていで「長和殿ちょうわでん」のベランダに天皇・皇后両陛下をはじめ皇室の方々がお出ましになるのを待つ。皇室の方々がお出ましになると、人々は手に持った日の丸の小旗を振ったり、万歳を唱えたりして祝賀の気持ちを表す。

その後、天皇陛下から新年を祝う「おことば」がある。

皇室の方々が奥におもどりになると参賀者も退出する――という流れだ。

前日の新年祝賀の儀が、タテ軸における国家の公的秩序の頂点=「日本国の象徴」としての天皇の立場、役割を示しているのに対して、この日の新年一般参賀は「国民統合の象徴」という立場、役割に基づいて誰も排除されず、人々のゆるやかな連帯感と平等性を表示するヨコ軸の行事といえるだろう。

能登半島地震被害で中止に

令和2年(2020年)に令和になって初めての新年一般参賀が行われた。この時の参賀者の数は6万8710人だった。

しかしそれ以降、コロナ禍によって天皇誕生日の一般参賀も含め、しばらく実施が見合わせられてきた。昨年は実施されたものの、感染対策のために参賀者を絞る必要から抽選を行った。

今年からやっと普通の姿にもどるはずだった。

しかしすでに述べた通り、前日に能登半島地震が起き、深刻な被害を生じた。そのため、急に取りやめとなった。

天皇陛下は毎年、阪神淡路大震災が起こった「1月17日」と東日本大震災が起こった「3月11日」に、皇后陛下、敬宮殿下とご一緒に黙祷を捧げておられる。3月11日はまだ皇太子でいらした震災の翌年の平成24年(2012年)から、1月17日は即位後の令和2年(2020年)以来、黙祷を続けておられる。

震災によって亡くなられた人々を悼み、多くを失った人々の悲しみに寄り添おうとされている。そのような天皇陛下のお気持ちを拝察すると、今回の参賀中止は自然な決定だろう。

来る2月23日の「天皇誕生日」には一般参賀が晴れやかに行われることを祈る。

関連記事
「愛子天皇」よりずっと現実的…「愛子さまが大活躍される未来」のために国民がすべきこと
なぜ自民党と新聞は「愛子天皇」をタブー視するのか…「国民の声」がスルーされ続ける本当の理由
「愛子天皇」を実現するのは石破氏か、河野氏か、進次郎氏か…置き去りにされた「自民党総裁選」の重要な争点
「なぜ悠仁さまは学習院を外したか」男性・男系天皇にこだわり天皇制を維持する社会制度を整えない日本の怠慢
昭和天皇が父親のように慕っていた…太平洋戦争を終結に導いた「77歳の老臣」に昭和天皇が打ち明けた本音