さて、先ほど、この断食には煩悩にとらわれた負のスパイラルから脱出する目的があるとお話ししました。そのために断食期間中から始めていただきたいトレーニングがあります。それは、欲しいものやしたいことが思い浮かぶたびに、理由を含めてノートに書き出すことです。

例えば、「期間限定品のワンピース オシャレな人と注目されたい 1万9800円」「高機能ファンデーション これで5歳は若く見える7千円」「三つ星レストランのディナー プロの味を楽しみたい 3万円」「最新のスマホ ママ友に自慢したい 7万円」「エステ付きの高級旅館へ2泊3日旅行 セレブな時間を満喫したい 10万円」……などなど。どれだけ書いていただいても構いません。

そして、これを何度も声に出して読み返してください。ほら、バカバカしくなったでしょう(笑)。この欲望を書き出したノート“煩悩赤裸々ノート”で、常にあなたの煩悩と向き合い、自分が本当に求めているものと、一時的な物欲とをはっきり区別していきましょう。

しかし、こうした努力をしていても、一歩街に出れば、すぐに煩悩を揺さぶるようなものに遭遇してしまいます。最近では街に出ずとも、インターネットショッピングなどの誘惑もありますね。そのときのために、“問答メモ”も用意します。

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問答メモ、赤裸々ノートの書き方、使い方

方法は簡単で、手帳やノートなどに、「本当に今買うの?」と書いて、いつも持ち歩くのです。そして、欲しいものに出合うたびにその文面を見て、自分に問いかけます。

「何のために辛抱しているの?」「その辛抱で貯まったお金はいくら?」「これを今買うことで、将来につながる?」と。

この“煩悩赤裸々ノート”と“問答メモ”は、断食終了後も続けましょう。こうして常日頃から煩悩に対する問答を習慣化していけば、「今月はワンピースを我慢したおかげで、久しぶりに友達に会ってランチと映画が楽しめた」など、達成したい目的のための我慢なら苦ではないということがわかってきます。そうすれば自然と余計なお金を使わずに済むようになり、煩悩を上手にコントロールできるようになっていくのです。

煩悩は空だきすると人の心を焼き尽くす魔物ですが、上手に使えば夢や目標を達成するための強力なエネルギーになります。私たちは煩悩だらけの世の中を生きています。それを抑え続けるなど、所詮不可能。上手にマネジメントして、利用することを考えるほうが賢明です。

ここまで、ブッダの教えをお金に当てはめ、かみ砕いてお話ししました。ブッダのように「脱・煩悩の境地」に至るのは無理だとしても、その知恵を借りれば、煩悩は上手にマネジメントすることができるようになります。衝動買いの辛抱も、目的があれば、きっと苦しいだけのものではなくなるはずです。

僧侶、マネーマネジメントコーチ 佐藤颯融(さとう・そうゆう)
福島県生まれ。お金・投資について真正面から語る世界初のお坊さん。ブッダの教えとコーチングやNLPの手法を融合して、お金にとらわれない生き方を提案する。愛称はお坊さん投資家・さとちゃん。初の著書『お坊さんマネーコーチが教える お金にとらわれない生き方』(サンクチュアリ出版)が好評。
(構成=森下和海)
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